埼玉県臨床細胞学会

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          埼玉県臨床細胞学会 

             支部長   

                   

 病院や集団検診あるいは人間ドックでの癌検査の一つに細胞診検査があります。これは悪性細胞の有無を顕微鏡で判定する検査ですが、検査する人は細胞検査士や細胞診指導医の有資格者です。日本臨床細胞学会の構成メンバーは、これら細胞検査士や細胞診指導医、あるいは細胞検査士や細胞診指導医を目ざして勉強している臨床検査技師や医師からなっています。
 喀痰中には肺の気管支から剥離した細胞が、尿中には膀胱の壁から剥離した細胞が多数含まれています。もし肺や膀胱に癌があった場合、表層の癌細胞が剥離して尿中に混ざってきます。これを見い出すのが細胞診検査です。

喀痰は粘液を溶かして、尿は遠沈して細胞を集め、スライドガラスに塗沫して、アルコール液で細胞を固定します。数種の染色液と反応させて、核の染色体や細胞質などを色分けして標本を作製します。1個の悪性細胞も見逃さないように顕微鏡で標本を1枚1枚細心の注意で観察します。

症例の提示

  53歳男性 喀痰中に認められた腺癌細胞



 写真中央に癌細胞集団を認める。癌細胞の核は大小不同を示し、核内には赤く染まる著明な核小体がみられる。

  

  37歳女性 子宮頚部のスメアで認められた扁平上皮癌細胞



  オレンジや青に染色された大型で奇怪な形の癌細胞がみられる。細胞の中央に黒い大型の核を認める。


 症例によって、癌細胞の顔つきは多種多様で、時には良性か悪性かの判断に迷うような細胞も混在します。そこで正しい診断をするために多数の経験と研鑽が欠かせません。

埼玉県支部会は、会員の細胞診検査に関する研究発表および研修の場を提供し、会員の細胞診断能力の向上、最新知識の習得にお役に立っています。また、細胞検査士や指導医の育成、そして埼玉県癌集団検診への協力など、埼玉県民の医療に関りながら広範囲な活動をしています。


癌のミニ知識

日本人の死亡原因

日本人の病気による死因について考えてみますと、昭和51年には癌による死亡率が脳血管疾患を抜いて死因の第1位となっています。癌はその後、更に増加して第2位との差を拡げています。近年では死因の30%を越え、実に3人に1人は癌死と言う統計が出ています。医療の発達や検診の普及、その他の要因により胃癌や子宮頚部癌による死亡率は減少している一方で、肺、大腸、肝、食道、乳腺、前立腺などの癌は増加しています。


癌の発生機構

 癌は遺伝子(
DNA)の異常によって発生します。ですから遺伝子の病気と言えます。癌の原因はたくさんありますが、遺伝子を傷つける物質、因子はすべて癌の原因となります。
喫煙と食物が癌発生要因としてもっとも重要で、そこに含まれる発癌物質、変異物質、発癌促進物質が作用して遺伝子(DNA)を傷つけます。放射線、化学的発癌因子、ウイルスなども発癌因子として重要です。
発癌に関係する遺伝子は特に癌遺伝子と癌抑制遺伝子ですが、遺伝子が傷つられると、正常の遺伝子の変異で癌遺伝子が活性化し、また癌抑制遺伝子の欠損など多数の遺伝子異常が関与して正常細胞が異常細胞となり、遺伝子が多段階に変異を起こして癌が発生します。


臓器別の癌治療成績
 癌は発生部位によって治癒率が違っていますが、5年後に生存している患者さんの割合(5年生存率)を比較して下さい。乳癌や子宮頚部癌では治癒率が高く生存者が多いことが判ります。



  表1 臓器癌別の5年生存率  

           5年生存率

乳癌、子宮頚部癌   
8090

胃、大腸癌、     
5060

肺、食道、膵臓癌   
30%以下



癌の予防を考える
 完全治癒が期待できる早期癌のうちに癌を発見することが大切です。

行政側からは、集団検診を普及させて胃癌や子宮頚部癌による死亡率を大幅に減少させました。
個人では、やはり検診あるいは人間ドックを定期的に受けて、癌の早期発見に勤めることが大切です。しかし、癌を予防する毎日の生活習慣がもっとも重要でしょう。

 表2、癌予防の注意事項 
   1、禁煙(発癌の3040%減少する)
   2、環境、食品(発癌物質を避ける)に注意
   3、日光(紫外線)を避ける

   4、C型肝炎、子宮頚部HPV感染(ウイルス除去治療)
    
5、適度な運動をする。

癌の検査
 1、画像診断検査

    放射線検査、CTMRIなど
 2、血液検査(腫瘍マーカー測定)
    
いくつかの癌細胞は腫瘍マーカーという特殊な蛋白を産生し血液中に放出
    します。 腫瘍マーカーには
CA-19-9, CEA, AFPなど多数が知られており、
    血清中に異常値として測定されます。

 3、病理検査

    細胞診検査

     顕微鏡で癌細胞を検出し癌を診断します。
     検査する材料は、喀痰、尿、腹水等の他に、病変部位を綿棒で擦る(子
     宮頚部癌など)、病変を注射針で刺して吸引する(乳腺、甲状腺、リンパ
     節など)など色々な方法で細胞を採取し、その採取された細胞中から悪
     性細胞の有無を診断します。

     細胞診検査の特徴は、患者さんに検体採取で苦痛を与えることが少ない
     ので、容易に繰り返し検査ができ、また肺癌や子宮癌などの集団検診に
     適しています。
    病理組織検査
     病変部の組織片を顕微鏡で検査して、病気の診断をします。良性、悪性
     の別だけでなく、炎症、循環障害などあらゆる病変の診断をします。診断
     の目的で検査する生検と、治療で手術摘出した臓器を詳細に検査する
     手術材料の検査があります。

     1、生検(胃生検、大腸生検、肝生検、腎生検、前立腺生検、乳腺生検な
       ど)
        
治療する前に診断目的で病変部の一部を採取して病理標本を作製
        し顕微鏡で診断する。

     2、手術材料
        手術にて摘出された臓器を、ホルマリンで固定後に細切し、病理標
        本を作製し、病変の組織型診断、病変の拡がり、切除断端への浸
        潤の有無、リンパ節への転移、リンパ管、血管への浸潤の有無など
        詳細に検索し診断する。



細胞検査士、細胞診指導医になる方法
     細胞検査士の資格は、臨床検査技師の国家試験を取得した後に、細
     胞検査士の資格試験の受験が可能です。詳細はリンク先を参照してくだ
     さい。
      細胞診指導医の資格は、医師国家試験合格者が、日本臨床細胞学会
     に3年以上会員として勉強したものに受験資格が与えられます。現在、
     細胞診指導医は、婦人科医、病理医、臨床検査医、内科医、外科医など
     が資格を取得しています。

 リンク先  関連サイト

事務局
  支部会事務 獨協医科大学越谷病院 病理部
E-mail   jscsaita@dokkyomed.ac.jp

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