プレジデントシンポジウム 癌免疫療法は夢のヒト癌医療として貢献できるか?
10月12日 第 1 会場 時間:14:00〜17:00
Top へ戻る
S_PL
[ 6 ]
レチノイド療法

武藤 泰敏1), 森脇 久隆2)
岐阜大学 名誉教授1), 岐阜大学 第一内科2)


レチノイドとはビタミンAとその誘導体の総称名であり、とくに癌の化学予防を目指した数多くの誘導体も合成されている。レチノイドは視覚、生殖機能、免疫能の維持および上皮組織の分化と成育、さらに形態形成など多彩な生理作用をになっている。近年、核内レチノイン酸レセプター(RAR,RXR)を介して、遺伝子発現に関与することが実証されている。なお、RARおよびRXRの内因性リガンドはそれぞれall-transレチノイン酸(ATRA)と9-cisレチノイン酸(9CRA)である。ここでは、癌のレチノイド療法として、急性前骨髄球性白血病(APL)のATRA療法と、肝細胞癌(HCC)の再発抑制(2次肝癌の予防)をめざした非環式レチノイド(ACR:ポリプレイン酸誘導体)についてその特徴と臨床的意義について述べ、両療法について比較してみたい。1. APLに対するATRA療法:1988年Huangら(上海)により大量のATRAの経口投与(45mg以上/m2/日)がきわめて有効と報告された(完全寛解率96%)。このATRA療法は欧米で追試確認され、現在世界中で臨床に応用されている。APLの再発にも有効で、正常の好中球へ分化誘導することから、従来強力な化学療法で合併するDICを惹起させずに寛解に導く点で注目に価する。しかし、ATRAによる過剰症は必発で、とくにレチノイン酸症候群に対する予防が肝要である。APLにはt(15:17)転座があり、PML/RARαキメラ遺伝子が同定され、これが前骨随球以降の分化を阻害しているとみなされている。ATRAによる分化誘導の作用機序およびATRA耐性APLなどの課題についても附言する。2.肝発癌抑制に対するACR療法:1996年演者らは、術後完治例にACR経口投与(600mg/日、1年間)し、中止後も5年以上に亘って追跡したところ、累積非再発率が有意に対照群に比べて低いことを報告した(とくに追跡中央値38か月で2次肝癌の発生頻度16% vs.44%、P<0.05)。また、最近絶対生存率においても両群間に有意差が認められた(追跡中央値62か月で73% vs.56%、P=0.04)。とくに注目すべきことは、1年間の服薬に拘らず、ACRには殆ど副作用がない点である(頭痛1例:2%)。ACRの抗発がん作用機序の詳細は明らかでないが、分化誘導とともに、アポトーシス誘導が重視される。APLのような特異な遺伝子変異は見い出されていないが、肝癌細胞でRXRの代謝異常があり、作用機序を含めて今後の研究課題である。結語:両レチノイド療法に共通な点は癌病巣に選択性をもつBRM作用である(分子標的治療)。

JSCO37 抄録集