新型インフルエンザ情報
新型インフルエンザ(H1N1)による急性呼吸不全の治療について
日本呼吸療法医学会は、新型インフルエンザ(H1N1)感染者に、呼吸不全が急速に重症化する症例が存在するとの海外情報に鑑み、我が国の急性呼吸不全治療に係る医師ならびに関係者に最新の情報を提供し、治療体制の整備に寄与できることを願っている。
海外治療経験の情報源は、主にイギリスおよびオーストラリアを中心とした公式情報、ならびに信頼できる私的情報であり、新着情報に基づき、逐次、提供情報内容を更新、あるいは追加する。
なお、人工呼吸療法を専門とする本学会は、我が国でも大流行の兆しが見られることから、新型インフルエンザ治療について人工呼吸療法を中心とした支援体制を早急に整える予定である。
日本呼吸療法医学会
理事長 丸川征四郎
会長(第32回学術集会) 落合 亮一
新型インフルエンザ委員会委員長 竹田 晋浩
委 員 小谷 透
中川 聡
成人の新型インフルエンザ治療ガイドライン第二版
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鳥インフルエンザ(H7N9)について
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2010年度インフルエンザ重症症例の解析結果
日本呼吸療法医学会・危機管理委員会
危機管理委員会報告「2010年度インフルエンザ重症症例の解析結果」をUPしました。本報告は、日本呼吸療法医学会危機管理委員会、日本集中治療医学会新生児小児集中治療委員会、日本集中治療医学会新型インフルエンザ調査委員会が合同でまとめたものです。『人工呼吸』第28巻2号、『日本集中治療医学会雑誌』第19巻1号に掲載予定ですが、それに先がけてWeb版として両学会のホームページにて同時公開となりました。
2011年9月12日
新型インフルエンザによる重症呼吸不全のデータ解析
日本呼吸療法医学会・危機管理委員会
今年度の新型インフルエンザ (A-H1N1)は感染者の年齢層が昨年度と異なり、20~50歳代に多く出ています。そこで、昨年度に日本呼吸療法医学会・新型インフルエンザ委員会(現・危機管理委員会)へ症例登録を行っていただいたデータから重症呼吸不全患者データ解析結果をお届けします。
コメント:
1: 重症呼吸不全において、簡易テストが陰性でPCR検査で確定診断がついた症例が約1/4もあった。治療開始の遅れは致命的であり、原因不明の重症呼吸不全ではA-H1N1を疑い、速やかにPCR検査を考慮することを推奨する。特に人工呼吸管理になっている場合は、咽頭ぬぐい液ではなく下気道からの分泌物(喀痰など)でPCR検査を行うべきである。
2: 抗ウイルス薬は、できる限り早期に用い、奏効しない場合には増量ならびに投与延長を考慮すべきである。
成人(16歳以上)の重症呼吸不全患者データ解析結果の要約
成人(16歳以上)33人(男性23人、女性10人)。
死亡率30.3%(10人)。男性で有意に高かった。
男性の死亡率 (45.0%)、女性の死亡率 (7.7%)、p=0.023。
APACHE II scoreは死亡例で有意に高かった。
生存例18、死亡例24、p=0.028。
SOFAスコアは死亡例で有意に高かった。
生存例9、死亡例11、p=0.028。
初診時体温(全症例38.2度)は死亡例で有意に低かった。
生存例 38.8度、死亡例 37.7度、p=0.025。
簡易診断キットが陰性で、PCR検査が陽性であった症例が24.4%(8人)いた。
生存例 17.4%、死亡例 40.0%、p=0.164。
リスクファクターの合併。
免疫不全 21.2%、慢性呼吸器疾患 18.2%、精神神経疾患 15.2%。
COPDは死亡例で多く合併していた(生存例 4.3%、死亡例 30%、 p=0.038)。
治療経過中のacute kidney injuryまたはacute hepatic failureの合併は死亡率を上げた。
Inotropic agentsは60.6%(20人)に使用。CHDFは27.3%(9人)に使用。
抗ウイルス薬のオセルタミビルは全例に投与。15.2%(5例)で増量、21.2%(7例)で延長投与。
High doseステロイド療法は27.3%(9人)に行われた。
生存例21.7%(5人)、死亡例40%(4人)、p=0.279。
Low doseステロイド療法は42.4%(14人)に行われた。
生存例43.5%(10人)、死亡例40%(4人)、p=0.853。
シベレスタットは48.5%(16人)に投与。
生存例47.8%(11人)、死亡例50%(5人)、p=0.909。
ECMOは4人に導入され、うち1人が死亡した。ECMO導入例では、「人工呼吸開始直後のPaO2/FiO2」は、非ECMO例と比較して有意に低かった。
ECMO導入例 75、非ECMO例128、p=0.034。
(注: 統計計算の数値は中央値で表した。)
(なお小児のデータは死亡例の報告が1例だったため、生存群と死亡群との比較は行っていません)。
新型インフルエンザに対する注意
日本呼吸療法医学会・危機管理委員会
昨年度、流行した新型インフルエンザ(H1N1)は今年度も流行の主たるウイルスとなり、国内でも死亡例が報告されています。
H1N1における簡易診断キットでの陽性率は高くないので、呼吸不全でH1N1が疑われる場合にはPCR検査による確定診断を強く推奨します。
診断、治療の遅れは重症化を招きますので、早期に確定診断を行うことが必要です。なお、以下のとおり厚生労働省より保健所に対し、PCR検査をできる限り行うようにと、昨年末に通知がでていますので、躊躇せずにPCR検査を依頼しましょう。