ご 挨 拶   第45回日本小児血液学会総会開催にあたって

  第45回日本小児血液学会総会の開催にあたりご挨拶申し上げます。今回のテーマは「オリジナリティを求めて」としました。たまたま私共の教室で「ヘムオキシゲナーゼ1欠損症」という、従来全く記述のない、臨床的にも新しい疾患が発見されたのを、いささか手前味噌になりますが、記念してと言いますか、きっかけとして思い付いたテーマです。この酵素はヘムを酸素化し、ビリベルディンに代謝する酵素ですが、その欠損により過大な酸化ストレスが主に血管内皮や腎尿細管上皮を傷害し、全身性の炎症・組織破壊が引き起こされるのです。発見のきっかけは、強い溶血がみられるのになぜビリルビンが上昇しないのか?ハプトグロビンが低下せず、逆に高値なのか?という非常に単純な疑問に、ちょっと昔の生化学の教科書を開いてみたのがきっかけです。振り返れば「コロンブスのたまご」です。なぜもっと早くに誰かが気付かなかったのか。(この欠損症の詳細は、日児誌102:1267,1998、J Clin Invest 103:129,1999、日児誌106:1380,2002、金沢大学小児科のホームページhttp://web.kanazawa-u.ac.jp/~med21をご覧ください。)
  近年、各方面での改革のなかで独創性とか、オリジナリティとかが強く叫ばれています。なにごともブレイクスルーがないと一段上に進歩しません。発見は偶然の幸運かもしれませんが、しかしそこに到るまでには詳細綿密な観察力と不撓不屈の実験の繰り返しがあったはずです。「チャンスは眼のある者のみに訪れ、分析の知識と技術を持つ者によりつかみ取られる」「Opportunityの神は、前髪をたらし、後ろ頭は禿げている」という格言もあります。努力の後に報われたオリジナリティの高い、そしてそれによって血液学が一段進歩したと思われる症例・研究や最近のトピックスを改めて集め、それらの発見のきっかけとなったエピソードをもう一度再現することによって、今後の臨床治療的研究や実験的研究、さらに教育の場での独創的、個性的発想を生み出す糧にしたいと思うのです。このような主旨でワークショップを組みました。多数の応募をありがとうございました。
  もちろん小粒でも、これは自分が見つけのだ、という示唆に富んだ、新知見をふくんだ200題をこえる一般演題が口演、ポスター発表されます。「klein, aber mein」という言葉がわたしは好きです。昨年も好評でした委員会報告と組み合わせたワークショップを組みましたので、我々の学会活動の現況を把握できると思います。二つの特別講演も本学会のテーマに沿って、新しい分野への挑戦的な話題を選択しました。シンポジウムでは、白血病・悪性腫瘍に対する造血幹細胞移植と化学療法の現状と課題をまとめてみたいと思っています。金沢大学は日本で第1例目の骨髄移植が実施された地でもあります。
  2日間と短い期間ではありますが、十分ディスカッションされることを希望します。また、懇親会やコンサートを通じてお互いの親睦を深め、古都金沢の秋を堪能していただければまことに幸いです。
第45回日本小児血液学会総会会長 小 泉 晶 一
(金沢大学大学院医学系研究科・小児科)