Case Report

促通反復療法を含む1か月の集中リハビリテーションによって皮質脊髄路と皮質網様体路に変化がみられた発症後5年の脳卒中片麻痺の2例

木佐俊郎,加藤三千夫,酒井康生,間口大公,内田麻貴子,川角久美子,石原広崇,大田 誠
Jpn J Compr Rehabil Sci 16: 60-67, 2025

【背景】脳卒中片麻痺の回復期に拡散テンソルトラクトグラフィー(DTT)を追跡した症例報告はあるが,慢性期での報告はない.
【症例】発症より5年を経過した脳卒中片麻痺2例に促通反復療法とフェノールブロックを含む1か月の集中リハビリテーション治療(集中リハ)を行い,痙縮と麻痺の改善を得た.集中リハ前後にてDTTで明らかな変化を認めた.両例とも,治療前に病巣側の皮質脊髄路(CST)が描出されていなかったが,治療後にはCSTは起始部が一次運動野領域に描出され下方に延伸していた.第1例では5年間で経脳梁線維(TCF)と経橋線維(TPF)が対側から病側半球へ伸びて,DP(運動下行路)のうち皮質網様体路(CRP)が病巣側・対側とも増えていた(とくに病巣側において)が,治療後は病巣側・対側ともにCRPが減少した.第2例ではTCFが密となり対側のCRPが著増した.
【考察】DTTの変化を追跡した症例報告は,これまでは全てが片麻痺発症1年以内であった.今回は,5年を経過した陳旧例であり,集中リハにより短期間で上肢と手の運動機能が向上したばかりでなく,DTT上でも機能変化を裏付けるような画像変化が生じた.
【結論】脳卒中片麻痺の陳旧例におけるDTTの集中リハ前後を撮像して変化を追跡した報告は初めてである.CSTの新たな描出,CRPの増加,TCFの出現など変化の殆どは,1年以内の回復期例の集積から得た作業仮説に沿っていたが,1症例で治療後にCRPが減少した.この結果は作業仮説には無かった新知見と考えられ,考察を加え報告した.

【キーワード】:脳卒中片麻痺,慢性期,機能回復,拡散テンソルトラクトグラフィー,促通反復療法

第16巻 目次