Case Report

関節リウマチが併存した左大腿切断患者への義足リハビリテーション治療

石坂舞子,今井陽平,村田詳子,岡﨑哲也
Jpn J Compr Rehabil Sci 16: 30-36, 2025

【はじめに】左大腿切断後に関節リウマチと多発化膿性関節炎を発症し,大腿切断や関節機能障害と不動による合併症(廃用症候群)や,日常生活活動(以下ADL)能力の著しい低下,経済的困窮や不利な住環境など多くの問題を抱えた症例のリハビリテーション治療経験について報告する.
【症例】50歳代男性.本例への介入当初は関節リウマチに伴う上肢の疼痛や不動による四肢体幹の筋力低下や右片脚立位保持の困難,運動耐容能の低下,ADL能力の低下などのため,義足歩行訓練の実施が困難な状態にあった.しかし,若年で今回左大腿切断に至るまでの活動性は保たれており,併存疾患である関節リウマチをコントロールしつつ身体機能の改善を図ることで,本例にとって実用的な義足歩行の獲得が可能と考えた.関節リウマチに配慮した機能訓練を行いながら段階的にADL能力向上を図り,社会資源を利用することで最終的に自宅生活に必要な義足歩行を獲得して自宅退院に至った.
【考察】下肢切断術を行った時点では実用的な義足歩行が困難と思われる事例においても,その後に獲得しうる残存能力を十分に検討して安易に義足作製の適応外としないことが重要と考えられた.

【キーワード】:大腿切断,関節リウマチ,義足歩行,チームアプローチ

第16巻 目次