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ウェアラブルIMUによる下肢姿勢角・関節角度の実時間推定―擬似片麻痺歩行と正常歩行―

金賀 駿,村岡慶裕
Jpn J Compr Rehabil Sci 16: 19-29, 2025

【目的】機能的電気刺激(FES)装置に組み込むことを想定し,計算負荷の小さい姿勢推定手法を用いて,歩行時の大腿・下腿傾斜角,膝関節角度を推定し,その精度や処理時間の実用性を検討した.
【方法】2つの慣性計測ユニット(IMU)を大腿部外側と下腿部外側に装着し,健常成人2名が脳卒中片麻痺者特有のぶん回し歩行を模した歩行と正常歩行を平地で行った.また,片麻痺者の時空間的な左右非対称性を再現するため,歩行用ペースメーカーを作製して使用した.測定後,計算負荷の小さいMadgwick フィルタによりマイコン上で姿勢推定(矢状面・前額面)を行い,処理時間を記録した.そして,光学式モーションキャプチャで計測した姿勢データと比較し,二乗平均平方根誤差(RMSE)と相互相関関数によって推定精度を評価した.
【結果】サンプリング,姿勢推定,刺激制御までの合計の処理時間は平均6.8 msであった.矢状面の姿勢角のRMSEはすべて4°以下であり,先行研究と同等の精度で推定できた.前額面の姿勢角については,ぶん回し歩行時の推定精度が比較的高く,ぶん回し動作を捉えることができていた.一方,正常歩行では推定精度が低い傾向にあった.
【結論】先行研究と比較して推定精度を損なうことなく,サンプリング,姿勢推定,刺激制御までの処理を10 ms以内に実行できたため,実質的にリアルタイムでの処理(100 Hz以内)が可能であることが明らかとなった.

【キーワード】:6軸IMU,ぶん回し歩行,大腿傾斜角,下腿傾斜角,膝関節角度

第16巻 目次