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リハビリテーション専門職による目標設定が心理的側面に及ぼす短期効果の検討−回復期脳卒中者を対象とした非無作為化比較試験−

宝田 光,本家寿洋
Jpn J Compr Rehabil Sci 16: 1-8, 2025

【目的】リハビリテーションでは患者と療法士の間で目標設定が行われ,プログラムへの参加促進や不安の軽減など,心理的側面への効果が期待されている.本研究の目的は,療法士が提案する目標の中でも特に優先順位の高い目標を選択した実験群と,療法士が目標を提案した対照群で,目標設定が心理的側面に及ぼす短期効果を比較検証することである.
【方法】2023年10月〜2024年3月の期間で回復期リハビリテーション病棟に入院した患者88名が取り込まれた.包含基準を満たした脳卒中者32例の内,優先順位の高い目標を患者が選択した目標設定群(実験群:n=17),療法士が提案した目標に患者が同意した目標設定群(対照群:n=15)の2群に割付した.主要アウトカムとしてリハビリテーションへの参加意欲,副次アウトカムとして不安・抑うつ感,精神健康感を測定した.
【結果】両群共に目標設定後のアウトカムが改善した.群間比較では実験群のリハビリテーション参加意欲が有意に改善した(p<0.001).無作為化比較試験に必要なサンプルサイズは各群46名であった.
【結論】優先順位の高い目標を患者が検討し選択することは,リハビリテーションの参加意欲に短期効果があると考えられた.

【キーワード】:目標設定,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,心理的効果

第16巻 目次