Case Report

歩行練習支援ロボットに歩行神経筋電気刺激を併用して歩行能力が改善した脳梗塞後左片麻痺患者の1例

山口晃史,金沢 翼,平野 晢,青柳陽一郎
Jpn J Compr Rehabil Sci 15: 88-93, 2024

【背景】片麻痺患者に対する歩行訓練として,歩行練習支援ロボット,歩行神経筋電気刺激装置が有用であると報告されている.しかし,歩行練習支援ロボット,歩行神経筋電気刺激装置を併用した患者報告例は見当たらない.今回,左片麻痺を呈した歩行障害患者に歩行練習支援ロボットと歩行神経筋電気刺激装置を併用導入し,顕著な歩行能力の向上を認めた症例を経験したため報告する.
【症例】右中大脳動脈領域の脳梗塞を発症した60歳男性.発症57日目の評価では,SIAS左下肢運動項目全て0で,歩行不可.同日より歩行練習支援ロボットを用いた治療を開始した.66日目の評価でもSIAS下肢項目は全て0で,振出時に左足部つまずきが頻回にみられたため,歩行練習支援ロボットを用いた歩行練習に歩行神経筋電気刺激装置併用による治療を開始した.88日目の評価では,SIAS下肢運動項目全て1,短下肢装具,サイドケインにて,FIM歩行項目が4に改善した.89日目より,機器を用いない従来介入に移行した.114日の評価では,SIAS下肢運動項目全て2,裸足,T字杖にて歩行が可能となった.
【結論】歩行練習支援ロボットと歩行神経筋電気刺激装置を併用したことで,振り出し時の足関節背屈運動が促進され,介助量の少ない歩行練習を行うことができた.その結果,患者主体の能動的な歩行,効率的な運動学習が促されたことで,歩行獲得に至った可能性が考えられた.

【キーワード】:歩行練習支援ロボット,機能的電気刺激,運動学習

第15巻 目次