齋藤 司,蒲池匡文
Jpn J Compr Rehabil Sci 15: 71-78, 2024
【目的】本研究は,栄養関連予後予測指標として用いられるGNRI(Geriatric Nutritional Risk Index)の当院回復期リハビリテーション病棟における変化を詳細に
調査し,さらに退棟時のADL(日常生活動作)能力にGNRIがどのように関連するか調査することを目的とした.
【方法】2023年4月から9月までの間に当院回復期リハビリテーション病棟に入棟した患者のうち107例を対象として後ろ向き調査を行った.栄養リスク指標としてGNRIを用いた.ADL指標としてFIM(Functional Independence Measure)を用い,多変量解析を行いGNRIとの関連を検討した.
【結果】患者の平均年齢は80.0±10.3歳で,男性38例,女性69例であった.入棟時の平均体重は51.2±10.2kgで,退棟時には50.2±9.4kgへ有意に減少していた(p=0.0006).平均BMI(Body Mass Index)も入棟時の21.4±3.4に比べ退棟時は20.0±8.2に有意に減少していた(p=0.002).入棟時の平均GNRIは93.1±8.6であったが,退棟時には91.7±8.4へ有意に減少していた(p=0.023).平均体重は,入棟後4か月目まで減少し5か月目以降は減少傾向が見られなかった.GNRIも同様の経過であった.月毎の平均摂取エネルギー量は入棟後に徐々に増加し,算出された必要エネルギー量の1,415±22kcalには5か月目に到達した.多変量解析では,退棟時FIMに退棟時GNRIが正に関連していた(β=0.21,p=0.0008).
【結論】体重とGNRIは入棟後減少の経過を辿ったが,摂取エネルギー量が徐々に増加したことで5か月目以降は減少しなかった.退棟時FIMには退棟時GNRIが正に関連していた.入棟後初期から積極的な栄養療法を行い退棟時までにGNRIを高めることが,退棟時のADL能力を高めると期待される.
【キーワード】:低栄養,GNRI,回復期リハビリテーション,FIM,リハビリテーション栄養