Case Report

脊髄梗塞後の重度上肢麻痺患者に対して上肢リハビリテーション支援ロボットと課題指向型訓練の併用が有効であった一例

横井絢香,宮坂裕之,小川浩紀,伊藤翔太,岡﨑英人,園田 茂
Jpn J Compr Rehabil Sci 15: 42-48, 2024

【目的】脊髄梗塞による重度上肢麻痺によりセルフケア全介助であったが,上肢リハビリテーション支援ロボットと課題指向型訓練を併用し上肢の機能改善がみられた一例を経験したため報告する.
【症例と経過】60歳代男性.前医で第5?7頸髄領域の分水嶺梗塞と診断され,発症から18日後に当院へ転院した.入院時,両上肢の重度麻痺を認めFIM運動項目合計25点であった.COPMによる評価では,食事をする,トイレに行く,会議で挙手をする,の3つが挙がり,トイレに行くという項目の遂行度のみ3点であり,他の項目は遂行度,満足度ともに1点で あった.介入内容はCOPMで選択された項目を中心に1時間/日の課題指向型練習を実施し,追加して上肢リハビリテーション支援ロボットを用いた訓練を1時間/日実施した.上肢リハ支援ロボットは症例の機能レベルと回復状況に合わせて運動範囲,負荷を調整した.入院から約3か月後,上肢機能はADLで空間保持が可能なレベルまで改善し,FIM運動項目81点へ改善した.またCOPMでは入院時に挙がった全項目の満足度,遂行度ともに10点へ改善し,入院から108日後に当院を退院した.
【考察】運動機能のレベルに合わせた上肢リハビリテーション支援ロボット訓練が運動機能とROMの向上を促進し,課題指向型訓練によりADLに汎化ができたことがADL向上に寄与したと考えられる.また,COPMを用いたことで,患者自身にとって意味のある活動の獲得に対して訓練に主体的に取り組めたことが,COPMの遂行度,満足度の向上に繋がったと考えられる.

【キーワード】:上肢機能,脊髄梗塞,上肢リハビリテーション支援ロボット

第15巻 目次