紙上真徳,椿原彰夫,伊藤智崇
Jpn J Compr Rehabil Sci 15: 27-33, 2024
【はじめに】重症な新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって,集中治療室(Intensive Care Unit: ICU)にて人工呼吸器管理を受けた後に,著明な下肢筋力低下と歩行困難を来した症例に,下肢筋力増強を目的として反復末梢性磁気刺激(rPMS)を施行した.
【症例】70歳代の男性.COVID-19 による呼吸困難で,人工呼吸器管理となった.54日後に人工呼吸器を離脱し,225日後に気管切開部を閉鎖したが,著明な下肢筋力低下が残存し,車椅子生活となった.デイサービスにて約6か月間の機能訓練が行われたが,身体機能や動作能力の変化は認められなかった.そこで,両側大腿四頭筋に対して30 HzのrPMSを1日当たり20分間,週3回,計12回(4週間)施行した.rPMS終了後の最大随意収縮時の膝関節伸展トルクは(右42.1 Nm,左40.7 Nm),施行前(右33.7 Nm,左36.2 Nm)よりも増大した.rPMS施行前にはrPMS誘発による膝関節伸展筋トルク(rPMS誘発トルク)は両側0 Nm で,30秒椅子立ち上がりテスト(CS-30)は実施困難,機能的自立度評価法FIM)の歩行項目は2点(耐久性30 m)であったが,rPMS終了後のrPMS誘発トルクは右6.5 Nm,左4.7 Nm,CS-30は1回実施可能,FIMの歩行項目は6点(耐久性60 m)となった.
【結論】本症例はCOVID-19後のICU関連筋力低下と考えられるが,rPMSの利用が筋力増強に繋がったものと推測される.
【キーワード】:反復末梢性磁気刺激,骨格筋,末梢神経,筋力増強,新型コロナウイルス感染症2019