渡邉直美,鎌倉やよい,深田順子
Jpn J Compr Rehabil Sci 15: 17-26, 2024
【目的】日本の喉頭摘出者の1つの患者会における食道発声訓練システムおよび食道発声指導へのニーズを明らかにする.
【方法】喉頭摘出者の患者会X会の食道発声訓練システムを参加観察した.食道発声指導へのニーズは同会の発声訓練士7名,食道発声学習者11名,家族8名に対してインタビューガイドに基づき半構造化面接を実施し,質的帰納的に分析した.
【結果】X会は,日本喉摘者団体連合会(以下,日喉連)によって組織化や指導体制等が整備され,12名の発声訓練士が食道発声,電気喉頭の訓練を行っていた.訓練では,X会が発刊する「発声練習教本」などが用いられていたが,実際の指導方法や訓練内容・方法は各発声訓練士の裁量に任されていた.X会の食道発声指導へのニーズとして,『食道発声の指導方法・指導内容の改善』『患者会の組織改革』が得られた.前者は【科学的根拠に基づいた確実に発声できる指導への改善】【上達した学習者への指導方法の改善と役割付与】,後者は【指導力のある訓練士から訓練を受けるための訓練士自身の継続教育システム構築】【指導に対して学習者・家族が意見を言える患者会への変革】などの各3カテゴリから構成された.
【結論】X会では,12名の発声訓練士によって代用発声法の指導が行われていた.X会の食道発声指導へのニーズとして,「食道発声の指導方法・内容の改善」や「患者会の組織改革」へのニーズが示された.
【キーワード】:食道発声,発声訓練,喉頭摘出者患者会,患者会組織