Original Article

高齢心不全患者の入院時認知機能障害が退院時の日常生活動作に与える影響

野中裕樹,藤井 廉,田中慎一郎,田平一行
Jpn J Compr Rehabil Sci 14: 78-83, 2023

【目的】改訂長谷川式簡易知能評価スケール(Hasegawa's dementia Scale-Revised: HDS-R)は高齢者の認知機能のスクリーニング評価として広く使用されている.本研究では高齢の心不全(heart failure:HF)患者において入院時の認知機能障害(cognitive impairment: CI)が退院時の日常生活動作(activities of daily living: ADL)に与える影響を検討した.
【方法】この後方視的観察研究では2016年4月から2022年12月の期間に,急性非代償性HFにて入院した394名が取り込まれた.年齢,性別,Body Mass Index,在院日数,リハビリテーション開始日,New York Heart Association(NYHA)心機能分類,Charlson Comorbidity Index,服薬状況,脳性ナトリウム利尿ペプチド,左室駆出率,腎機能,ヘモグロビン値,血清アルブミン値,Geriatric Nutritional Risk Index(GNRI),Barthel Index(BI),HDS-R をχ2検定, 対応のないt検定,Mann-Whitney U検定,重回帰分析を用いて解析した.
【結果】394名のうち,最終的に包含基準を満たした102名が本研究に取り込まれた.先行研究に基づきADL自立群(n=44)とADL非自立群(n=58)に分類した.重回帰分析により,年齢,性別,NYHA心機能分類,GNRI,入院時のBI scoreの影響を考慮しても,入院時のCIが退院時のBI scoreに独立して関連することが示された.
【結語】本研究の結果は,高齢HF患者のADL改善を目的としたリハビリテーション介入において,CIの有無がADLの改善に影響する可能性を示したものである.

【キーワード】:心不全,高齢者,日常生活動作,認知機能障害

第14巻 目次