宮坂裕之,中川裕規,岡﨑英人,園田 茂
Jpn J Compr Rehabil Sci 14: 54-59, 2023
【目的】本研究では,車椅子駆動姿勢の違いが車椅子駆動能力に及ぼす影響を検討した.
【方法】対象はStroke Impairment Assessment Set(SIAS)の腹筋力,体幹垂直性が2点以上,かつ,非麻痺側下肢筋力が3点の脳卒中患者とし,日常生活における車椅子駆動の姿勢により,バックサポートに背部をもたれて駆動する患者8名(LBS群: Lean on Back Support Group)と,バックサポートから背部を離して駆動する患者11名(Non-LBS 群: Non Lean on Back Support Group)に分類した.車椅子駆動方法は非麻痺側片手片脚駆動とし,課題は10m直進,3m先の目標物を麻痺側回り,および非麻痺側回りで駆動した.統計学的検討として,両群間で駆動時間,駆動回数,駆動前後の非麻痺側膝蓋骨前端から座面前端までの長さの差(臀部移動距離)を比較した.
【結果】臀部移動距離は麻痺側回りおよび非麻痺側回りでNon-LBS群がLBS群に比べ有意に短かった(p<0.05).駆動時間,駆動回数,握力は両群間で有意差はみられなかった.
【結論】体幹機能が良好な患者でも,バックサポートにもたれた姿勢で駆動することにより,臀部の前ずれが発生しやすく二次的なリスクにつながる可能性が考えられる.駆動時の前ずれを最小限に止めるためには駆動姿勢の指導と体幹を垂直位に保持するためのシーティングが必要であると考えられる.
【キーワード】:脳卒中,車椅子,駆動能力,前ずれ