原著

前舌保持嚥下法が嚥下中の咽頭腔へ与える影響−320列面検出器型CTを用いた運動学的解析−

粟飯原けい子,稲本陽子,青柳陽一郎,柴田斉子,加賀谷斉,佐藤百合子,小林正尚,才藤栄一
Jpn J Compr Rehabil Sci 11: 35-42, 2020

【目的】前舌保持嚥下法(THS)が嚥下時の咽頭腔に与える影響について,320列面検出器型CT(CT)を用いて3次元的に運動学的解析を行った.THSでは咽頭腔体積が唾液嚥下(SS)に比べ減少する,つまり咽頭がより縮小すると仮説を立てた.
【方法】言語聴覚士6名(22−29歳)を対象とした.SSとTHSをCTにて撮影し,咽頭腔体積,舌骨喉頭の運動距離,食道入口部(UES)の開大面積を計測し,SSとTHSで比較した.
【結果】嚥下中の咽頭腔体積はSSに比しTHSで縮小する例だけでなく,拡大する例も認めた.嚥下開始時の舌骨,および最大上方位の舌骨喉頭はTHSで有意に高かった.UES面積はTHSで有意に大きかった.
【考察】THSによる咽頭腔体積への影響は一定の傾向を認めなかった.今後,挺舌長などTHSの方法論について検討する必要が示唆された.また舌骨喉頭挙上およびUES開大にも寄与する可能性が示された.

【キーワード】前舌保持嚥下法,Tongue-hold swallow,320列面検出器型CT,摂食嚥下障害

第11巻 目次