Case Report

重症急性呼吸促迫症候群発症後,急性期から回復期まで継続したリハビリテーションにより社会復帰し得た急性大動脈解離の1例

田代尚範,佐藤督忠,鈴木 洋,笠井史人
Jpn J Compr Rehabil Sci 11: 116-120, 2020

70歳男性.背部痛を主訴に救急受診し,急性大動脈解離Stanford B型にて緊急入院した.安静と降圧・鎮痛薬による治療を開始したが,第2病日に低酸素血症を認め,急性呼吸促迫症候群(ARDS)と診断された.第4病日,PaO2/FiO2(P/F比)124.7と低酸素血症は残存し,理学療法を開始した.1日11‐16時間の腹臥位療法を連続4日間実施し,第7病日には,P/F比は300以上を維持でき,画像所見も改善を認めた.第10病日に人工呼吸器を離脱し,食事と離床を開始した.第12病日には,握力(右/左)26.8/25.5kg,大腿四頭 筋筋力(右/左)0.22/0.19kgf/kg,Medical Research Council(MRC)スコア56点,Functional Status Score for the Intensive Care Unit(FSS-ICU)28点となり,ICUを退室.収縮期血圧140mmHg以下の範囲で段階的に運動負荷量を漸増し,第37病日には,杖歩行や階段昇降が可能となり,リハビリテーション病院に転院となった.第65病日には,フリーハンド歩行自立し,握力34.0/33.0kg,大腿四頭筋筋力0.48/0.49kgf/kg,MRCスコア60点,FSS-ICU35点,6分間歩行距離342mと良好に機能回復し,自宅退院となった.

【キーワード】急性呼吸促迫症候群,急性大動脈解離,リハビリテーション,社会復帰

第11巻 目次