原著

慢性期脊髄損傷患者の排便機能障害に対する経肛門的洗腸法

尾関 恩, 加賀谷斉, 柴田斉子, 小野木啓子, 杉山智久, 才藤栄一
Jpn J Compr Rehabil Sci 10: 9-13, 2019

【目的】腹部膨満感などの自覚症状があり排便コントロールが不十分な慢性期脊髄損傷患者に対する経肛門的洗腸法の効果を検討すること.
【方法】慢性期脊髄損傷患者8例に洗腸器セットを用いた経肛門的洗腸法を導入した.平均年齢は44歳,損傷部位は頸髄2例,胸髄4例,腰髄1例,仙髄1例であった.洗腸法導入前,導入完了後に排便所要時間,排便間隔,便秘,下痢,失便の有無,排便管理方法,排便状況のvisual analogue scale(VAS)を評価した.さらに,最終観察時に洗腸法使用の有無,便秘,下痢,失便,排便管理方法を評価した.
【結果】洗腸法の導入は全例に可能であった.排便所要時間と排便間隔は導入前後で変化なく,便秘は有意に減少し,VASも有意に改善した.最終観察時には4例で洗腸法を継続しており,排便コントロールが良好になって洗腸法を中止した2例を含む6例で良好な結果を得た.
【結論】洗腸器セットを用いた洗腸法は脊髄損傷患者の排便機能障害に有効である.

【キーワード】脊髄損傷,排便機能障害,洗腸法,便秘,失便

第10巻 目次