原著

脳損傷による中途障害者の長期的な主体性回復のプロセス

和田真一, 長谷川幹
Jpn J Compr Rehabil Sci 10: 29-36, 2019

【目的】脳損傷による中途障害者の生活の長期的な改善につながる「主体性の回復プロセス」を理解しやすい形にしたモデルを作成する.
【方法】当事者,支援者,医療関係者,学者を含めた18名を構成メンバーとして18回の主体性研究会議を行った.メンバーへの脳損傷による中途障害者の「長期にわたる在宅での生活回復」と「主体性」に関する半構造化インタビュー結果を元に,M-GTA 法で質的に分析した.
【結果】分析ワークシート検討から45個の概念が生成され,本人の経過に関する概念から,5つの回復軸と5 つの回復段階が浮かび上がった.モデルでは,自分や自分の周囲への理解という認知要素が基礎となって,主体性3要素(意欲,自分次第という考え, 自信)を支え,この主体性が回復すると価値観の変化から自尊感情の高まりが期待できることが示された.
【結論】モデルは,障害当事者の段階をおおまかに評価でき,特徴を捉え,周囲の人で共有できる情報となり,有用と考えられた.

【キーワード】主体性,脳卒中,脳外傷,生活期リハビ リテーション,在宅リハビリテーション

第10巻 目次