谷川広樹, 大塚 圭, 山田純也, 向野雅彦, 松田文浩, 加賀谷斉, 才藤栄一, 金田嘉清, 橋本修二
Jpn J Compr Rehabil Sci 10: 14-20, 2019
【目的】観察による歩行分析において,臨床経験年数と典型的な症例を観察させることが信頼性に及ぼす影響を明らかにすること.
【方法】30名の理学療法士を教示なし群/あり群の2群に分け,さらに臨床経験年数で全4群に分けた.
30名の片麻痺患者の歩行ビデオを観察させ,異常歩行パターンの重症度を5段階に判定させた際の一致率を算出した.教示あり群には判定前に各重症度の典型例を観察させた.
【結果】重症度判定の一致率は教示なし群は低く,あり群の方が高かった.臨床経験年数による違いはなかった.ほぼすべての評価者の組合せに有意な順位相関があった.有意な順位相関があり,かつWilcoxonの符号付順位検定で有意差がなかった組合せ数は教示あり群に多かった.
【考察】臨床経験年数に関わらず観察による歩行分析の信頼性は低く,評価者の主観的尺度の違いが主な原因と考えた.各重症度を示す標準的な症例の観察が信頼性向上に有効である.
【キーワード】観察による歩行分析,片麻痺,信頼性,臨床経験,教示