原著

抑うつを並存する高齢呼吸器疾患患者はADL困難感が高い

大野真志, 河野裕治, 青柳陽一郎, 辻有佳子, 石川綾子, 杉浦 翼, 森 悦子, 田中康友, 加賀谷斉, 廣瀬正裕, 堀口高彦, 才藤栄一
Jpn J Compr Rehabil Sci 9: 29-33, 2018

本研究では高齢呼吸器疾患患者を対象に抑うつと身体機能,呼吸機能,Activity of Daily Living (ADL)の特徴について検討した.対象は呼吸器内科よりリハビリ依頼があった者から,65 歳以上で退院時に身体機能,肺機能および抑うつ評価であるHospital Anxiety and Depression Scale (HADS) が測定可能であった160例を解析対象とした.全対象を抑うつなし群(HADS≦ 7)と抑うつあり群(HADS≧8)の2群に分け,両群間で身体機能,肺機能,NRADL(The Nagasaki University Respiratory ADL Questionnaire),FIM運動項目についてχ2検定,対応のないt 検定を用いて比較した.抑うつは40例(22.7%)に認めた.両群の比較では年齢,性別,BMI,身体機能,肺機能 には差を認めなかった.ADLはFIM運動項目には差を認めなかったが(75.4±20.0点 vs 73.1±20.2点, p=0.529),NRADLでは抑うつあり群で低値を示した(71.6±19.0点 vs 59.7±26.2点,p=0.020).呼吸器疾患患者のADL低下は,動作遂行能力が保たれ ているが呼吸苦により困難感を高めることが報告され ている.本結果より,抑うつは身体機能やADL能力が同等であってもADLを遂行する上で困難感を生じることが示された.高齢呼吸器疾患患者に対する ADL評価の際には,動作以外に抑うつや困難さの評価を併用する必要性が示唆された.

【キーワード】高齢者,呼吸器疾患,うつ,ADL,身体機能

第9巻 目次