田村貴行, 大高洋平, 中本 順, 加藤啓祐
Jpn J Compr Rehabil Sci 7: 102-106, 2016
【目的】滑りは,転倒様式の主要なものの一つである.本研究は,踏み出した足が滑ることによって生じる身体の変化について運動学的解析を行った.
【方法】健常成人男性5名(22.2±2.4歳)を対象とした.立位から右足を踏み出した際に,前方,外側,内側の3方向にベルトを駆動することによって,人工的な滑りを生じさせた.3次元動作解析を行い,支持基底面(BOS)と重心(COG)の関係について検討した.
【結果】COG は,すべての滑りで前・外側方へ変位した.BOSに投影したCOGは,内外側の大きな滑りにおいてBOSから逸脱した.また,踏み出した足が滑りにより移動することでBOSが変化し,COGが取り残されることで,とくに内側滑りにてバランスを崩すことが多く観察された.
【結論】踏み出し時の滑りにおける姿勢制御は,内側,外側,前方滑りの順に,安定性を保つことが困難で危険性が高いことが示唆された.
【キーワード】転倒,動作解析,姿勢制御,支持基底面