症例報告

リハビリテーション中の失調の進行により,傍腫瘍性症候群の確定診断に至った1例

佐藤義朝,大井清文,高橋 明,村上英恵,村田深雪,名取達徳,米澤久司,寺山靖夫
Jpn J Compr Rehabil Sci 6: 113-117, 2015

回復期リハビリテーション中に失調症状が増悪し,前医へ精査を依頼した結果,傍腫瘍性症候群(paraneoplastic syndrome;以下PNS)の診断が確定した症例を経験したので報告する.症例は,四肢失調の増悪と抗神経抗体陽性より,PNS が疑われたが全身の検索でも明らかな腫瘍性病変を指摘できず確定診断に至らぬまま回復期リハビリテーション病棟へ入院した.リハビリテーション開始後に失調症状が増悪したため,再度精査した結果,FDG-PET 画像から婦人科悪性腫瘍と診断され,子宮全摘術と両付属器摘出術を施行し左卵巣の漿液性腺癌に合併したPNSが確定した.通常,回復期リハビリテーション病棟対象者には,少ないながらも病状の不安定な神経疾患が含まれている.抗Yo抗体陽性のPNS は予後不良なことが多く,リハビリテーション開始後も失調症状が増悪した場合には,早期にPNS を鑑別し確定診断に至ることが予後を左右することから貴重な症例と考え報告した.

【キーワード】paraneoplastic syndrome,ataxia,CA125,anti Yo antibody,rehabilitation of recovery stage

第6巻 目次