症例報告

多臓器合併症を持つ高齢下腿切断患者に対する全身温熱療法の有用性

新井伸征, 目谷浩通, 阿部理奈, 清水五弥子, 関 聰介, 平岡 崇, 花山耕三, 椿原彰夫
Jpn J Compr Rehabil Sci 5: 61-65, 2014

閉塞性動脈硬化症,糖尿病,狭心症(CABG 後),非切断側難治性潰瘍を合併した片側下腿切断患者に対して,ホットパックと防寒シートを使用した全身温熱療法を行い,歩行能力の獲得に至った症例を報告する. 末梢循環改善薬の内服,フットケアも入念に行っていたが非切断側の足部の潰瘍は悪化傾向にあった.全身温熱療法後,皮膚灌流圧の改善を認め,徐々に潰瘍は改善した.退院時,両側ロフストランド杖と義足,徐圧目的の足底板を使用して近距離であれば屋外歩行可能となり,自宅へ退院した.末梢循環障害が原因の切断患者は皮膚病変により,義足歩行練習が困難となることが多い.和温療法は限られた施設でしか行えない. 今回の全身温熱療法は,和温療法と同様の効果を得られ,高齢の血行障害性切断患者の補助療法としては有用なものであり,多くの施設にとって利用しやすい療法であると考えられた.

【キーワード】高齢者,切断,閉塞性動脈硬化症,糖尿病性足病変,温熱療法

第5巻 目次