南 晃平, 永冨史子, 渡邉 進, 椿原彰夫
Jpn J Compr Rehabil Sci 5: 50-55, 2014
【目的】再転倒のリスクが高いとされる大腿骨頚部/転子部骨折患者を対象に,水平固定面に力学的支持となり得ないわずかな指先接触(以下,軽接触)をすることで立位が安定するかを検討した.また接触力の強い指先接触(以下,強接触)との違い,ならびに接触
に用いる上肢側について,併せて検討した.
【方法】回復期リハビリテーション病棟入院中の大腿骨頚部/転子部骨折患者11名を対象に指先接触条件の異なる5条件で立位足圧中心動揺を比較検討した.
【結果】足圧中心動揺の総軌跡長は指先接触を用いない立位(88.4±33.0 cm)に比べて,健側軽接触(65.5 ±
38.4 cm),患側軽接触(64.5±32.6 cm),健側強接触
(45.1±23.4 cm),患側強接触(46.1±26.2 cm)とすべての指先接触条件で有意に減少し(F=26.9,p<
0.01),さらに軽接触に比べ強接触でより顕著に減少した.接触に用いる上肢は骨折側と非骨折側で差はなかった.
【結論】軽接触では指先接触による体性感覚入力の増加によって立位が安定し,強接触ではその効果に加え,
指先接触による力学的支持を得ることで,立位がより安定すると考えられた.
【キーワード】大腿骨頚部/転子部骨折,足圧中心動揺,指先接触