原著

失語症患者の聴覚的理解過程におけるモーラ分解能力の関与

清水道子, 鈴鴨よしみ, 藤原加奈江, 出江紳一
Jpn J Compr Rehabil Sci 2: 63-70, 2011

【目的】失語症患者の聴覚的理解過程におけるモーラ分解能力の関与について検討を行った.
【方法】検査に同意が得られた左半球損傷による失語症患者28名に対し,単語の聴覚的理解検査,モーラ分解能力検査(有意味語,無意味語),語音弁別能力検査,言語性短期記憶検査を実施した.
【結果】モーラ分解能力(有意味語)と聴覚的理解との有意な関連は認められなかった(F=0.72, p=0.407).モーラの種類別の比較では,モーラ分解能力有意味語直音のみの語と聴覚的理解との有意な関連が認められたが(F=7.50, p<0.05),撥音を含む語では認められなかった.モーラ分解能力と聴覚的理解との関連に,有意味語と無意味語で差はなかった(無意味語全正答数:F=0.03, p=0.857,無意味語直音のみの語:F=4.40, p<0.05).
【結論】単語の聴覚的理解過程において,音韻分解能力が音韻知覚を助けている可能性が示唆された.また,その分節単位はモーラではなく音節である可能性が考えられたが,分節単位については今後更に検討が必要である.

【キーワード】失語症,モーラ分解能力,聴覚的理解, 音韻知覚

第2巻 目次