佐藤新介, 文野喬太
Jpn J Compr Rehabil Sci 1: 7-10, 2010
失語症患者は意思疎通が困難なことから,しばしば
情動不穏を呈し,病棟管理に支障を来たしたり,リハ
ビリテーション(以下,リハ)への拒絶反応さえ認め
ることがある.
抑肝散(Yi-Gan San;以下,YGS)は近年,アルツ
ハイマー型認知症などに伴うBehavioral and
Psychological Symptoms of Dementia の改善にも効能を
示すとされているが,YGS を用いて運動性失語患者
の精神症状の安定を図り,リハ拒否の状態から回復期
リハの治療へ適応できた3 症例を経験した.投与開
始後,1〜2週間で不穏症状の著名な改善を認めた.
短期間に改善していることから,セロトニン5-HT1A
受容体のパーシャルアゴニスト作用が薬理効果の主因
と考察した.
運動性失語などのコミュニケーション障害により,
二次的に情動不穏などの精神諸症状を呈した症例に対
してYGS は有効であり,試みる価値のある補助的治
療と考えた.
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