医薬品とアルコールの相互作用 

 「酒は百薬の長」といわれ、われわれの食生活及び社会生活において飲酒の習慣はなかなか切り離せません。しかし、アルコールと医薬品の相互作用には多くの事例が報告されており注意が必要です。

 アルコールと薬物の相互作用は、1. アルコールと薬物との相加的作用、2. 薬物によるアルコール代謝変化、3. アルコールによる薬物代謝変化の3つに分類されます。
 ある種の医薬品をアルコールと同時に服用すると、相加的作用により肝障害や低血糖等の危険な症状を示します。またアルコールは以下の図のようにアルコール脱水素酵素(ADH)、アルデヒド脱水素酵素(ALDH)により代謝されますが、これらの酵素を医薬品が阻害することでアルコール、アセトアルデヒドの血中濃度が上昇します。特にアセトアルデヒドの濃度が高いときに頭痛、顔面紅潮、発汗、頻脈、動悸、血圧低下、悪心、嘔吐等の症状を伴うアンタビュース作用を呈します。長期大量飲酒者はアルコールを代謝する薬物代謝酵素(CYP)が多く誘導されているので、CYPで代謝される薬剤は非飲酒時では代謝が促進されて薬効の減弱を示します。大量飲酒者であってもなくても、飲酒時又は飲酒後に服用すると薬物の代謝が阻害され、薬物濃度が高くなり、薬効が増強されることがあります。


 アルコールと薬物との相互作用を表1にまとめました。

表1 アルコールと薬物の相互作用一覧
分類 商品名 臨床症状 作用機序 重要度※ 対策
相加作用 ピリナジン、イスコチン 肝障害増強  

アルコール摂取を避けるか制限する
メソトレキセート

アルコール摂取を避ける
アスピリン、非ステロイド性消炎鎮痛剤 胃腸管出血 相加的な粘膜障害

アルコール摂取を避けるか制限する
バルビツール酸類、ベンゾジアゼピン系(ハルシオン、セルシン、デパス、リーゼ等) 鎮静・精神運動障害 相加的な中枢神経抑制

アルコール摂取を避けるか制限する
三環系抗うつ薬(トフラニール、トリプタノール、アナフラニール等)
抗ヒスタミン薬(ポララミン、ピレチア、アタラックスP等)
インスリン、経口糖尿病薬 低血糖 アルコールによる糖新生阻害

アルコール摂取を避ける
血圧降下剤 たちくらみ、起立性低血圧 アルコールの血管拡張作用による血圧降下作用増強

アルコール摂取を避ける
アルコール代謝変化 H2 blocker(タガメット、ザンタック;ガスターは相互作用なし) (血中アルコール濃度上昇) 胃粘膜ADH阻害

なし
セフェム系抗生物質(シオマリン、セフメタゾン、ベストコール、セフォペラジン、サンセファール) 頭痛、顔面紅潮、発汗、頻脈、動悸、悪心、嘔吐(アンタビュース作用) ALDH阻害

薬剤投与中及び投与後72時間はアルコール摂取を避ける
フラジール
ノックビン

アルコール摂取を避ける
ナツラン
経口糖尿病薬
薬物代謝変化 ワーファリン、アレビアチン、インデラル、アダラート、セルシン、サンデミュン、トリプタノール、経口糖尿病薬 薬効の減弱 CYP誘導による薬物代謝促進(長期大量飲酒者での非飲酒時)

アルコール摂取を避けるか制限する
薬効の増強 薬物代謝阻害
(飲酒時、飲酒後)

※1;絶対禁忌 2;危険性が安全性を上回るとき避ける 3;注意 4;危険性低い
(参考:Hansten and Horn's, Drug Interactions analysis and management)

 アルコール摂取を考えるとき、往々にしてビール、ウィスキー、ワイン、日本酒等を想起しますが、市販ドリンク剤にもアルコールが添加されており、医薬品とアルコールとの相互作用を考える場合無視できません。市販ドリンク剤中に添加されているアルコール量をまとめたものを表2に示します。
 アンタビュース作用発現には必ずしも大量のアルコール摂取を必要とせず、コップ1杯のビールでも生じる場合がありますので、素人判断により市販ドリンク剤を 1日 2 、3 本摂取した場合は、医薬品との相互作用を生じる可能性があり注意が必要です。
 例えば、アルコール濃度が 4 %(V/V)のビールを100 ml 飲用する場合、アルコールの比重は約 0.8 ですから、アルコール量を3.2 g 飲用することになります。市販ドリンク剤の中には 2 、3 本摂取すればコップ1杯分のビールを飲用したことに相当するものもあるため、市販ドリンク剤と医薬品との相互作用が生じる可能性を認識しておくべきです。

表2 市販ドリンク剤に含まれるアルコール量一覧
商品名 容量
(ml)
1瓶中のアルコール
量(g / 瓶)
商品名 容量
(ml)
1瓶中のアルコール
量(g / 瓶)
新ライクエレキサー

30

1.37
ソルマック

25

0.68
エスカップ E100

100

1.27
グロンサン強力内服液

30

0.60
ハイポリタンC

100

0.84
リポビタンDスーパー

100

0.59
新グロモント

100

0.80
ゼリア健胃内服液

30

0.37
ローゼリーゴールド内服液

30

0.77
リポビタンD

100

0.34
大正胃腸薬内服液

20

0.70
パンシロン胃腸内服液

30

0.27

[参考文献]
1)Hansten: Drug Interactions, 6th ed.(1989)
2)A G Fraser: Clin Pharmacokin, 33, 79-90(1997)
3)溝上直子ほか:臨床栄養 90, 185-191(1997)
4)「飲食物・嗜好品と医薬品の相互作用」研究班:薬事 32, 145-148(1990)
5)野村文夫ほか:医学のあゆみ 154, 833-836(1990)