メチルマロン酸血症患者に対するハイコバール(ビタミンB12)大量投与

 メチルマロン酸血症の患者さんにハイコバールが大量投与(一日量10mg〜20mg)されることがあります。この処方について解説します。

 メチルマロン酸血症とは、体液中に大量のメチルマロン酸が蓄積し、重篤なケトアシドーシスを生じる有機酸代謝異常の遺伝病です。その大部分は、分岐アミノ酸の中間代謝経路に位置するメチルマロニルCoAムターゼの異常によって起こります。この酵素はメチルマロニルCoAをスクシニルCoAに転換する重要な酵素であり、ビタミンB12を補酵素としています。すなわち、メチルマロニルCoAムターゼが正常に機能していても、生体内のビタミンB12の代謝経路に異常があれば、この反応は起こらなくなりメチルマロン酸血症となります。メチルマロニルCoAムターゼ欠損型では、体内から速やかにメチルマロニルCoAの除去を行うために補液、腹膜透析、血液交換を行い、急性期以降に食事療法による治療が行われています。これに対して、ビタミンB12代謝経路異常型では、ビタミンB12の大量投与を行います。東北大学病院小児科においても、後者のタイプの患者さんがおり、ハイコバールの大量投与を行っています。ここで、なぜメチコバールではなくハイコバールを用いるのかというと、最初に単離されたビタミンB12は、シアノ基がコバルトに結合したタイプのものでシアノコバラミンと呼ばれています。しかし、生体内ではその他に置換同族体があり、シアノ基の代わりにHO基がついたヒドロキソコバラミン、メチル基がついたメチルコバラミン(メチコバール)、5'-デオキシアデノシル基がついたコバマミド(ハイコバール)などがあります。しかも生体内においては、メチルコバラミンはコバマミドに置換されることがわかっています。メチルマロニルCoAムターゼは、コバマミド型のビタミンB12を補酵素として利用しているので、わざわざその前駆体であるメチコバールを投与するよりも、直接ハイコバールを投与した方が良いという理由でこのような処方がなされているのです。