βブロッカーの頭痛への使用

 頭痛は、日常の診療において最も多い主訴の一つで、原因疾患には、機能的な障害(片頭痛、群発頭痛といった血管性頭痛、ストレスや過労による緊張性頭痛)、器質的疾患(クモ膜下出血、髄膜炎、脳腫瘍など)、さらに全身の疾患が関与しています。
 前兆を伴わない片頭痛は片側性で、性質は拍動性、中等度から強度の痛みが起こり、発作中、悪心・嘔吐あるいは光や音に過敏になり、日常生活が妨げられます。一方、前兆を伴う片頭痛は、脳皮質あるいは脳幹の局所症状と考えられる閃輝暗点、視野異常、身体半側のしびれや脱力のいづれか、あるいは合併したものが、4 分以上にわたり展開し、60 分以内に拍動性の中等度から強度の頭痛が起こります。このような特徴が片頭痛にはありますが、病態生理については、Wolff の血管理論、Heyck の開放動静脈吻合理論、神経血管理論が論じられているものの、明確な結論は得られていません。
 片頭痛の急性発作には、エルゴタミン製剤(ジヒデルゴット、カフェルゴット)がよく用いられます。そのほか、アスピリンなどの解熱性鎮痛薬、頭痛の程度が重篤な場合は、まれですが麻薬性鎮痛薬のコデインを用いることもあります。
 一方、片頭痛発作が短い間隔で頻繁にかつ激しく発現する場合、その誘発を阻止するために予防薬が用いられ、β-blocker が使用されることがあります。片頭痛の予防に β-blocker が効果をもたらす作用機序は未だに不明ですが、β1 受容体の阻害がセロトニン遊離に影響を与えるためと考えられています。どの β-blocker も同等な効果を示すので、薬剤の選択は β1 受容体に対する選択性、ISA の有無、および患者個人の副作用の発現の有無などを考慮して選択することが大切です。FDA では、プロプラノロール(インデラル)とチモロール(ブロカドレン)について片頭痛の効能記載を認可しています(日本では適応外使用になります)。
 その他、三環系抗うつ薬やカルシウム拮抗薬(ベラパミル;ワソラン、ニフェジピン;アダラート、ジルチアゼム;ヘルベッサー)、セロトニン受容体拮抗薬(塩酸シプロヘプタジン;ペリアクチン)が予防薬として用いられています。三環系抗うつ薬の予防効果はプロプラノロールと同程度と報告されています。また、カルシウム拮抗薬は β-blocker や三環系抗うつ薬よりは予防効果は劣るといわれています。塩酸シプロヘプタジンは小児における片頭痛、ホルモン分泌異常に起因する片頭痛の予防薬として用いられます。