ランバート・イートン症候群患者への3,4-ジアミノピリジンの投与

 ランバート・イートン症候群(Lambert-Eaton myasthenic syndrome; LEMS)患者に対し処方される3,4-ジアミノピリジンについて解説します。
 ランバート・イートン症候群は筋無力症状を主徴とする慢性疾患であり、肺小細胞癌などの悪性腫瘍を合併することもあり、腫瘍随伴症候群の一つに含まれます。ランバート・イートン症候群患者血清中にはしばしば神経筋接合部の電位依存性カルシウムチャネルに対する自己検体が検出され、このため神経筋接合部での情報伝達が障害されて筋無力症状を呈します。
 この疾患に対して、臭化ピリドスチグミン(メスチノン)や塩酸メチルエフェドリンなどの投与が試みられていますが、現段階では厚生省の認可を受けている薬剤では十分な治療効果は得られていないのが実状のようです。
 3,4-ジアミノピリジンは神経終末からのアセチルコリンの放出を促進する作用を持つ研究用試薬であり、日本国内に於いてランバート・イートン症候群患者への投与に関する臨床的安全性や有効性は承認されてはいませんが、ランバート・イートン症候群における有効性が国内外で多数報告されています。
 3,4-ジアミノピリジンの投与方法は、15mg分3から漸増内服投与し、筋力改善の程度や副作用に注意しながら維持投与量(30-90mg/日)を決定し、連日投与します。
 3,4-ジアミノピリジンの副作用として、腹痛、下痢などの消化器症状、舌や手足のしびれ、ふらつき、イライラ感などがあります。副作用の発現は3,4-ジアミノピリジンの血中濃度に依存して認められます。
 この疾患は自己免疫疾患ですので、メスチノンや塩酸メチルエフェドリン、3,4-ジアミノピリジンのような対症療法の他に、免疫抑制療法も行われます。即ち、血漿交換療法、副腎ステロイド療法、γグロブリン大量投与が行われています。

 この疾患の他に、代表的な筋無力症に重症筋無力症があります。ランバート・イートン症候群は、自己抗体が前シナプス膜上の電位依存性カルシウムチャネルを減少させるため、神経終末からのアセチルコリン放出が低下することが原因ですが、重症筋無力症は、自己抗体が機能的・器質的にアセチルコリン受容体の減少を引き起こし、筋収縮に必要な活動電位が引き起こされず、筋無力症状を呈します。