注意欠陥多動障害(ADHD)とリタリン(塩酸メチルフェニデート)

 最近注目されている疾患に、注意欠陥多動症候群(attention - deficit / hyperactivity disorder; ADHD)があります。児童青年精神科の臨床現場では受診者が増加している疾患の一つですが、この ADHD ついて解説します。
 
【ADHD とは】

 ADHD は「多動」「不注意」「衝動性」を主徴とし、7 才までに発症する疾患です。「多動」は、学校での離席など移動性の多動と、「手足をモジモジしたりキョロキョロする」などの非移動性の多動に分けられます。「不注意」の例として、注意の持続時間の短さ、注意の方向性の変化、注意の不足に基づく過ちなどが挙げられます。「衝動性」としては、「順番が待てない」、「他人の行動に割り込む」、「過度のおしゃべりが目立つ」などが例として挙げられます。その他、極端な不器用さなどが認められたりします。また、特定の興味あることを除けば、集中力の欠如や持続力の不足は続き、知的な遅れはほとんどないのに学業成績は悪く、科目間のバラツキが大きいのも特徴となっています。随伴する臨床症状として、チック症状や強迫症状が知られています。

【ADHD の発症原因】

 脳炎後遺症、極端な栄養障害、頭部外傷後遺症、一酸化炭素中毒、鉛の慢性中毒など、生後に罹患した脳の機能障害が原因と考えられる症例があり、また低体重出生、新生児仮死、重症黄疸など周産期の異常が何らかの関与をしているとされる場合もありますが、原因の特定ができないものが多いです。
 その他、ドパミンをはじめとする脳内アミンなど、生理活性物質の異常が多動や集中力の欠如に関係していると指摘されていますが、現時点でははっきりとした原因は分かっていません。

【ADHD の治療】

 中枢刺激薬が多動や集中力の改善に有効であることが知られており、第一選択薬となります。これは、覚醒・催眠水準の障害に基づく多動や集中力を、昼間の覚醒水準を引き上げることで改善しようとする仮説に基づいています。国内で臨床的に使用されている薬剤はリタリン(塩酸メチルフェニデート)が大部分を占めています。通常は 5 - 20 mg / 日を朝 1 回または朝と昼の 2 回に投与します。効果持続時間は 3 - 4 時間程です。
 副作用として、食欲低下、衝動性の亢進、チック症状の出現などが知られており、必要に応じて減量や薬物の変更を行います。思春期以降では、幻覚・妄想などの精神症状の発現が報告されており、注意して投与する必要があります。
 中枢刺激薬のほかに、脳代謝改善薬や抗うつ薬も使われますが、効果の発現が緩徐で弱いのが難点となっています。衝動性が亢進している場合は、テグレトールR(カルバマゼピン)などの感情安定薬が使用されます。興奮が激しい場合は、セレネース(ハロペリドール)などの鎮静効果の強い向精神病薬も用いられます。