<原著>
徳島大学病院におけるDPC適合型肺がん手術
クリティカルパス導入による効果
鳥羽博明1) 近藤和也1) 久米博子2)
徳島大学病院 1)呼吸器外科 2)看護部
【要旨】
クリティカルパスは現在、様々な領域で使用されている。DPC導入は、多くの病院でクリティカルパス作成の流れを加速させた。当科では、2007年1月にクリティカルパスが電子カルテに組み込まれたのを受けて、DPC適合型肺がん手術用クリティカルパスを作成した。今回作成したクリティカルパスの周術期管理としての妥当性と医療効果について評価する。2005年4月~2006年11月までに肺がん根治手術を施行した53例のうち、合併症のなかった38例を非クリティカルパス群とし、それらの診療実績を詳細に分析して肺がん手術クリティカルパスを作成した。その後、2007年6月~2008年5月までに30例に対して作成したクリティカルパスを使用し、アウトカムを達成できた24例(クリティカルパス群)と非クリティカルパス群を比較した。バリアンスが発生した6例は、全て手術手技による合併症であった。クリティカルパスを使用したことによるバリアンスの発生はなかった。クリティカルパス群では平均在院日数は14.7±2.7日でDPCでの入院期間II(15日)内にとどまり、非クリティカルパス群では16.9±4.9日で有意に短縮できた。(p=0.024)また、予防的抗菌薬投与期間も4.1±2.1日から2.5±1.3日に有意に短縮でき(p=0.001)、クリティカルパス群の包括収入は非クリティカルパス群に比べて抑制される傾向にあった。今回作成したクリティカルパスは低コストで均一な医療を提供するとともに、電子カルテとの連動によって医療者の業務改善につながった。