<事例報告>
高度急性期病院におけるフォーミュラリー構築と病院経営および地域医療に与える影響

安 泰成1)2) 松永 佳誉子2) 阿瀬川 実里2) 梅澤 貴志2)
梶原 萌花2) 上原 麻子2) 小林 路子2) 武藤 正樹3)

1)国際医療福祉大学大学院 医療経営管理分野
2)横須賀共済病院 薬剤科
3)社会福祉法人日本医療伝道会衣笠病院グループ
よこすか地域包括ケア推進センター

【要旨】
 横須賀共済病院(以下、当院)は高度急性期を担う地域基幹病院で2019年7月よりフォーミュラリー(以下、FML)を施行した。推奨薬リストの策定は薬剤師を中心とした多職種ワーキンググループで合議し、処方オーダリングアラート等でプロモーションを図った。当院FML導入前後1年間における第1推奨とその他の薬剤について統計学的解析を用いて比較した。プロトンポンプ阻害剤(以下、 PPI)経口剤の調剤数量は第1推奨PPIが71,300錠から106,600錠へ増加し、その他PPIは116,100錠から83,500錠へ減少した。第1推奨PPIシェアはFML導入後56.1%へ導入前38.0%より向上し、その他PPIシェアと比較し有意な差を認めた(χ2 test、p<0.05)。FML対象薬の全4品目で経済性の高い第1推奨シェアが向上し、自施設における医薬品購入費約369万円/年の削減効果が得られた。院外処方でも同様の傾向を認め、処方箋発行データに基づく医薬品購入費の削減額は約1,763万円/年と試算された。高度急性期病院におけるFMLは病院経営の改善に有効と考えられ、さらに地域医療への波及ができれば医療圏全体で経済効果の拡大と地域包括ケアに向けた医療の標準化に繋がると考える。