第14回日本婦人科がん会議を平成29年6月9日(金)・10日(土)の両日新潟で開催させていただくことになり光栄に存じます。この機会を与えていただきました代表世話人の杉山徹先生をはじめ関係各位には心から感謝申し上げます。
近年の次世代シークエンサー(Next-Generation Sequence, NGS)を用いた網羅的遺伝子解析の著しい進歩により、ゲノム情報・生体分子情報が迅速かつ精密に分析されるようになり、がんをはじめとした疾病の原因が分子レベルで詳細に調べられるようになりました。それを受けて2015年1月にオバマ米国大統領(当時)が、一般教書演説の中で個人の遺伝子情報を含む医学情報を活用して個々の患者により適した医療を提供するというPrecision Medicine Initiativeについて言及しており、婦人科腫瘍分野でも米国婦人科腫瘍学会(Society of Gynecologic Oncology, SGO)の学術集会でゲノム情報に基づいた分子標的薬の選択に関する演題が急速に増加するなど、Precision Medicineが実践されてきております。しかし本邦の婦人科腫瘍の分野では、分子標的薬としてBevacizumabのみが保険収載されている状況であり、ゲノム情報に基づいたPrecision Medicineを導入する体制を早急に作る必要があると考えます。
そこで、本会議では『Precision Medicineの導入にむけて ― 現況と展望 ― 』を主題といたしました。第1日目にSGO前会長のRobert L. Coleman先生に基調講演をお願いし、米国のPrecision Medicineの現況についてご講演していただきます。また、隣国である韓国および台湾の現況をHee-Seung Kim先生とTing-Chang Chang先生にそれぞれご報告していただき、続いてJGOGセミナーとしてPrecision Medicine時代のJGOGの臨床研究の方向性をJGOG理事長杉山徹先生に、NGSを用いたTranslational Research(TR)には欠かせないバイオバンクとしてJGOGの新しい提携先である東北メディカル・メガバンクの概要を島田宗昭先生に、JGOGのTR研究を支えてくれる臨床研究情報センター(TRI)の概要とTR研究に必要なAMED等の競争的資金の獲得のためのknowhowについてTRIの福島雅典先生にご講演いただいた後、八重樫伸生先生にPrecision Medicine時代の日本婦人科腫瘍学会の展望を示していただきます。またディベートとして、「治療選択に、ゲノム情報が病理診断に替わる可能性があるか?」について、片渕秀隆先生に総論を解説していただき、病理医の立場(柳井広之先生)と、ゲノム情報を支持する立場(織田克利先生、松村謙臣先生)でお話ししていただきます。
第2日目には遺伝性乳がん卵巣がんの原因遺伝子であるBRCA1を同定した三木義男先生に、相同組換え修復というヒト細胞にとって普遍的に重要な機構に関与する遺伝子の異常が、どうして乳がん・卵巣がんの発症に深く関与しているのかについてご講演いただき、BRCA1/2をはじめとした相同組換え修復関連遺伝子異常を有する卵巣癌治療薬の選択として海外で最も臨床応用が進んでいるPARP阻害剤についてColeman先生に現況を紹介していただくことといたしました。また、様々な癌腫で注目されている免疫チェックポイント阻害剤について、基礎的観点から瀬谷司先生に、婦人科がんに対する臨床応用の観点で濱西潤三先生にご講演いただくこととし、さらにPrecision Medicine実践にむけて、手術検体から遺伝情報を得るために必須の検体処理方法について「ゲノム研究用病理組織検体取扱い規程」を作成された金井弥栄先生に解説していただき、実際に消化器がんのパラフィン包埋病理標本を用いて臨床応用可能なレベルでターゲットシークエンスを開始している永橋昌幸先生にPrecision Medicine実践後の問題点やその解決法をご講演していただくことにいたしました。最後に、Precision Medicineに伴う倫理的問題について加藤和人先生に解説していただきます。
また婦人科がんにおけるホットトピックスとして、2014年に改訂・出版された世界保健機関(WHO)の婦人科腫瘍組織分類(第4版)に採用となっているにもかかわらず未だ馴染みがないEndometrioid Intraepithelial NeoplasiaについてSteven G. Silverberg先生に、ビッグデータを用いた臨床研究について松尾高司先生に、最新の緩和支持療法事情を吉田好雄先生に、子宮頸癌に対する外科的治療の最近の話題について三上幹男先生にご講演いただきます。
月岡温泉は米どころの新潟平野の中にある温泉として古くから親しまれてきましたが、中でも華鳳は県内有数のコンベンションセンターと国内随一の硫黄含有量を誇る『白玉の湯』をもち、その規模と設備で新潟一の温泉と評価が高い宿です。夜はゆっくりと『白玉の湯』につかり、その後新潟の酒と肴を堪能していただければ幸甚です。
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