JC Original Articles Abstract 353-1J

題名


第二世代心筋トロポニンT迅速判定キットによる急性心筋梗塞の診断の有用性

著者

小川正一 / 安部 智 / 西郷正彦 / 小園時夫 / 山口憲一 / 戸田 仁 / 李 相崎 / 山下積徳 / 厚地良彦 / 立石繁宜 / 田原 稔 / 鳥居博行 / 秋元正樹 / 馬渡耕史 / 福崎雅彦 / 鄭 忠和

353

157-164

発行年月

2000 年 3月

要  約

 急性心筋梗塞のマーカーで最も心筋特異性が高い心筋トロポニンT(cTnT)上昇の有無を,全血を用いて15分以内で判定可能な第二世代cTnT迅速判定キット(Trop T)が臨床に応用されている.その第二世代Trop Tの急性心筋梗塞診断における有用性を明らかにするために,急性心筋梗塞を疑われた連続256例(うち梗塞例65例,非梗塞例191例)において,Trop Tの判定と,cTnT,クレアチンキナーゼMBアイソザイム(CK-MB),ミオグロビン(Mb)の測定を行い,比較検討した.
 急性心筋梗塞の診断率は,Trop T, Mb, CK-MBそれぞれ66%(43/65例),92%(60/65例),52%(34/65例),特異度はそれぞれ80%(153/191例),18%(35/191例),74%(142/191例)であった.Trop Tの急性心筋梗塞正診率77%(196/256例)は,Mbの37%(95/256例),CK-MBの69%(176/256例)と比べ有意に高値を示した(おのおのp<0.001,p<0.05).急性心筋梗塞の診断率は,発症3時間以内ではMbの86%(25/29例)が,Trop Tの31%(9/29例),CK-MBの31%(9/29例)に比べ有意に高かった(ともにp<0.001).一方,発症から3−6時間,6時間以降では,Trop Tのそれぞれの診断率は80%(8/10例),100%(26/26例)で,Mbの100%(10/10例),96%(25/26例)と比べて有意差を認めず,発症6時間以降ではCK-MBの69%(18/26例)より有意に高値を示した(p<0.01).また,急性心筋梗塞が否定された191例において,Trop Tが陽性を示した38例の入院中の死亡率は39%で,陰性153例の9%に比べて有意に高かった(p<0.001).血中cTnT濃度が0.10ng/ml以上でTrop Tが陽性のとき,Trop TとcTnT濃度の一致率は最も高く92%であった.
 以上より,第二世代Trop Tは,cTnTの上昇の有無を簡便かつ高い精度で判定可能であり,急性心筋梗塞の診断のみならず,それ以外の患者の予後の推定に有用であると考えられる.