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 トピックス
日本臨床倫理学会理事会およびクイックレスポンス部会の尊厳死法案へのコメント
2014.11.10
(6)終末期の医療に関する啓発(第11条)についての問題点
法律案第11条にあるように、国民に対する「終末期の医療に関する理解・啓発」は確かにたいへん重要な事項である。また、同条にあるように「延命措置の不開始を希望する旨の意思の有無を運転免許証および医療保険の被保険者証に記載・・・」することは、一つの簡便な啓発方法かもしれない。しかし、この「運転免許証および医療保険の被保険者証に記載・・」には、「終末期医療の意思決定プロセス」の理解に関して、根本的かつ重大な瑕疵を導いてしまう危険がある。
ここでの方法は、運転免許証等に二者択一的、あるいは〇×式に記載する方法になると考えられるが、各人の置かれた将来の状況を想定しながら、具体的な話し合い(対話・コミュニケーション)がなされるということが保障されず、適切な意思決定プロセスが実現されない可能性がある。ときに直観(感)的に記載がなされる可能性さえもある。終末期医療に関する事前指示に当たる「免許証等への記載」は、人生の最期の医療だけでなく、人生の最期の生き方を決めること(アドバンスケアプランニング)になるので、関係者間におけるコミュニケーションツールとして十分に機能する環境を整備しなければならない。 終末期医療の意思決定において重要なのは、患者本人の価値観や人生観・望むQOLや治療目標についての十分なコミュニケーション、つまり対話のプロセスそのものである。関係者が、患者本人に対して共感をもち、皆で話し合うことである。したがって、適切な意思決定プロセスが実践されることを保障しないままで、運転免許証等への記載に効力を持たせることには、倫理的観点から、大きな問題をはらんでいると考えられる。
 
(7)「本当に国民の真意かどうか」を見極める 
 
 

 序文
(1)「法制化」そのものが内包する根源的ジレンマ
(2)思考プロセスのマニュアル化・ショートカット化
(3)強要の無い自己決定の保障が必要であること
(4)「終末期の定義」の曖昧さ・不確実性
(5)国会審議のプロセスの問題
(6)終末期の医療に関する啓発(第11条)についての問題点
(7)「本当に国民の真意かどうか」を見極める
(8)いわゆる尊厳死法案(仮称;「終末期の医療における患者の意思の尊重に関する法律案」)を法制化する基盤が未だない
(9)DNAR指示(蘇生不要指示)との関係
(10)その他