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日本臨床倫理学会理事会およびクイックレスポンス部会の尊厳死法案へのコメント
2014.11.10
(9)DNAR指示(蘇生不要指示)との関係
本法律案と、DNAR指示との関係については、十分に考慮しなければならない。
DNAR指示(=Do Not Attempt Resuscitation)は、『疾病の末期に、救命の可能性がない患者に対して、本人または家族の要望によって、心肺蘇生術を行わないことを指す。これに基づいて医師が指示する場合をDNAR指示』と言う (1995 日救急医会誌)。DNAR指示を出している病院数は、救急を実施している病院では92.9%(2007)、最近では96%以上という報告もあり、相当数の病院で日常的にDNAR指示が出されていると推測される。 しかし、このDNAR指示に関する解釈が、医療者個人ごとに異なっており、DNAR指示によって、心肺蘇生術(CPR)以外の生命維持治療、例えば人工呼吸器・気管内挿管・アンビュー・人工透析・昇圧剤・抗生剤投与・経管栄養・補液・検査・利尿剤・抗不整脈剤などと言った様々な生命維持治療も制限されてしまっているという現実があり、これでは実質的な延命治療の差し控え・中止となってしまっている可能性があると指摘されている。
このようにDNAR指示によって、「治療の不開始」は既に日常的に日本中の多くの医療機関で(時には、残念ながら、十分な医療者と患者・家族とのコミュニケーションのプロセスがないまま)実施されているという現実があるが、この事実を謙虚に受け止め、これらの日常臨床の実情を非難するだけではなく、より適切なDNAR指示の実践(延命治療の差し控え・中止)に向けて、コンセンサスを得ることが必要である。
したがって、適切なDNAR指示を出すためには、患者の自律(Autonomy)を尊重し、適切な意思決定のプロセスを踏むことが重要であり、本法律案が、終末期における適切な意思決定プロセスを十分に保障するかどうかは、大きな影響を及ぼす。なお、上記の趣旨のもと、現在、日本臨床倫理学会は「DNAR指示に関するワーキンググループ」を組織し、DNAR指示に関する基本姿勢・ガイダンスおよび書式を作成中である。
 
(10)その他 
 
 

 序文
(1)「法制化」そのものが内包する根源的ジレンマ
(2)思考プロセスのマニュアル化・ショートカット化
(3)強要の無い自己決定の保障が必要であること
(4)「終末期の定義」の曖昧さ・不確実性
(5)国会審議のプロセスの問題
(6)終末期の医療に関する啓発(第11条)についての問題点
(7)「本当に国民の真意かどうか」を見極める
(8)いわゆる尊厳死法案(仮称;「終末期の医療における患者の意思の尊重に関する法律案」)を法制化する基盤が未だない
(9)DNAR指示(蘇生不要指示)との関係
(10)その他