■ 経済危機が健康を蝕む

1998年10月15日


 アジアの経済危機は見通しもつかないまま長引いている。社会保障システムが未発達のままだった東南アジア諸国では、貧困層が拡大し、飢餓、病気、売春が増加してきている。「20年は逆戻りした」という見方もあるほどだ。

 米紙ワシントン・タイムズは、先月25日、「インドネシア・ジャカルタ東部では、5歳以下の子供の約18%が体重が落ち、16%が発育を阻害され、29%の体重が標準以下である」とインドネシア大学の栄養調査結果を紹介している。一方、ユニセフによれば、人口密度の高いジャワ島の2歳以下の子供の半数以上が栄養失調だということだ。

 今年4月に開催された『アジアの経済危機と健康』という国際シンポジウムでは、タイの代表が、「タイ通貨バーツの下落で医療品の輸入コストが45%も上昇し、国公立病院で医療品が不足した。最近はワクチン不足で、予防接種の実施率が10年前のレベルに落ち込んでいる。今、庶民は10年前のように自分のことは自分の手で守らなければならない時代に戻った」と現地の厳しさを伝えていた。

 火急に対策を実施しなければならない状況だが、「東南アジア社会は成長した、いまは自助自立への段階にある」という風潮が先進諸国に染み付いているようだ。そして、「自国の経済を立て直し、世界経済の暴風雨をおさめることこそが彼らの利益である」と、経済にばかり気が向いてしまっている。

 次の3点は、すぐに対応しなければ、長期化する恐れがある問題である。

 まず、予防接種が滞っている問題。コミュニティにとって、持続的な予防接種は権利であり義務である。ある国の公衆衛生を維持する能力が低下した場合、必須の部分については外部からの支援が望まれよう。

 そして、薬剤耐性疾患が増加している問題。医薬品の値上がりから、継続して服用すべき抗生剤を節約しがちになっている。これは、薬剤耐性を増加させる危険がある。

 第3に、売春にともなうエイズ増大の問題。貧困から学校を中退した少女が、貧困ゆえに売春を強いられているケースが増加しているようだ。これに、避妊具の値上がりと政府の避妊具配布計画の経費削減が重なり、エイズの増大を招いている可能性がある。

【高山義浩・山口大学医学部学生】


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