■ 看護と国際保健(1)  なぜ国際保健か?

1998年8月15日


 世界の様々な問題について国境を越えて解決を試みる活動、すなわち国際協力が活発に、そして組織的に活動されるようになって半世紀がたとうとしています。

 第二次世界大戦後、破壊しつくされ、荒涼とした世界を立て直すべく、様々な国際機関が創設されました。たとえば、世界の子供の生存、保護、発達に努力するユニセフが1946年に、世界の人々が最高水準の健康を達成するべく働いているWHO(世界保健機関)が1947年に設立されました。その後、世界が団結して問題にあたるという理念が実行に移されるたびに、こうした国際機関と民間組織(NGO)や研究団体、そして各国政府とのパートナーシップが強化され、いま国際協力は大きなうねりとなって21世紀を向かえようとしています。

 あらためてこの半世紀をふりかえると、そこには目覚しい発展があったことに気がつくでしょう。人類の寿命は1950年代初頭には46歳でしたが、1996年には65歳となり、実に40%以上も伸びています。そして、1967年より開始された世界の天然痘根絶キャンペーンが、10年後、人類史上初めてひとつの疾病をこの世から追い払うという形で結実したことは、私たちに大きな勇気を与えました。また、ほとんどの難民がUNHCR(国連高等難民弁務官事務所)の保護下にあり、そのすべてが何らかの形でNGOのサポートを受けています。最近の話題では、地雷の廃絶にむけて世界が足並みをそろえるという画期的な出来事がありました。

 しかし、一方で世界にはいまだ難しい問題が山積しており、ときに悪化の様相を呈しています。難民問題、人口問題、食糧問題、環境問題、こうした問題について耳にされたことはあるでしょう。そして、もし少しでも勉強された方なら、その根深さに呆然とされたかもしれません。

 もちろん、いまもこうした問題について不断の努力が続けられています。そして、こうした中にあって国際保健とは、世界の諸問題について「健康」をキーワードに活動するものなのです。世界の人々が健康を得ることは、それ自体重要な権利といえます。しかし一方で、健康が社会の発展を促す原動力であることは、今まで十分に認識されてきませんでした。健康への投資はもっと優先されるべきです。なぜなら、道路や橋といったものは次第に古くなっていきますが、健康への投資はその子供たちにまで引き継がれ、学習意欲を高め、生産性を高め、やがて社会に還元されてゆくからです。国際保健は、世界の諸問題の解決へ向けて、ひとつの足がかりとなる可能性があります。

 21世紀、国と国との結びつきはより深まり、人と人との往来はもっと活発になってゆくでしょう。同時にAIDSの教訓が示すように、疾病問題は国境を越えて切れ目なく世界に広がってゆくでしょう。また、世界の健康状態の格差は、様々な摩擦へと発展してゆくかもしれません。いかなる国も個人も、もはや孤高の状態にあることはできないのです。国際保健の重要性が増しているのは、このような背景によるのです。

【高山義浩・山口大学医学部学生】


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