■ ラオス政府のAIDS認識度

1997年09月15日


 ラオスの『国立エイズ予防委員会(NCCA)』は、先月、AIDSについての統計結果を発表した。公表された統計によると、昨年では131人であったHIV感染者数が、今年上半期では176人に増加したとしている。また、ラオス国内のAIDS患者は現在204名で、ほとんどが都市部に集中しているという。地域別では、タイ北部と国境を接しているボケオ県がもっとも危険であるとし、つづいてビエンチャン市、サヴァンナケット県であるという。

 さて、この統計値、鵜呑みにすれば、ラオスはAIDS予防に成功を収めていることになるだろうが、残念ながら信憑性は薄いと言わざるをえない。

 たとえば、今春、ボケオの県都フエイサイにあるボケオ県立病院で、筆者はAIDS状況について調べたことがあるが、フエイサイ市内のデータでは3人(男1、女2)だけとなっていた。医師らに「これで全部か?」と尋ねると、「それで全部だ。患者はタイでの売春に関わりがあったんだ。」という。さらに、「HIVテストは月何例ぐらいしているのか?」と問うと、「やってない。検査キットがないんだ。」との答え。驚いて「どうしてAIDSと判定したんだ?」と問い詰めると、「いや、タイでAIDSだって診断されたらしいんだ。」と答えた。NCCAが、もっとも危険と認めるボケオ県都市部でこのスクリーニング体制である。冒頭の数字に疑念を覚えざるを得ない。8月7日のAP電でも、トニー・リズル先生(国連エイズプログラム・ラオス担当官)が「統計は完全なものではなく、全国的な調査から出された数字ではない」と発言し、NCCAに疑問を投げかけている。

 NCCAは、「他のアジア諸国と異なり、ラオスのAIDSは、国民の予防意識の向上で十分対応できる。」と楽観的であるが、NCCAが、手元にある資料の信憑性をどれだけ理解しているのだろうか。また、NCCAオフィサーのケオフォウバン先生は、ビエンチャンタイムズ8月20-22日号で次のように述べている。「AIDSは、マラリアや癌、糖尿病ほどは危険な病気ではない。人々はどうして他の病気にもっと注意を払わないんだ?」、NCCAのAIDSそのものへの理解も疑わしくなってくるコメントである。おそらくラオスのHIVは、WHOバンコクオフィスがAIDS第1号を1992年に発表して以来、確実に広がってきているだろう。NCCAが把握できているという都市部に限らず、トラック運転手などにより、地方へ伝播している可能性も高い。AIDSの現実を見据えるため、全国でのサーベイランスシステムから早急に構築すべきである。

【高山義浩・山口大学医学部学生】


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