■ 世界子供白書の概要

1995年12月15日


 12月11日、世界子供白書1996が、ユニセフより発行された。世界子供白書は毎年発行されているが、96年版は50周年記念号として、戦後50年の総括と共に、2000年へ向けての課題と具体的な方針が示されている。

 第1部では、戦禍に苦しむ子供とその暮らし、その死について報告している。過去十年間に、200万人の子供が戦争で死亡し、400〜500万人が障害を負った。また、1200万人が家を追われ、100万人以上が孤児になったり、親から引き離されている。近年、子供の被害が増大しているのは、子供が兵士として徴用されるようになって来ていることにも起因している。筆者もカンボジアの農村部でしばしば少年兵を見かけるが、その主な理由は、給料が安く、大人は他の仕事に逃げてしまうからだと聞いた。また、銃が子供でも扱えるほど軽くなってきたこともある。白書では、「子供の権利条約」で、現在15歳となっている徴募の最低年齢を18歳まで引き上げるべきだとしている。

 第2部では、歴史的な観点から過去50年の間に何が変わったのかについて取り上げている。1950年代は結核や、イチゴ腫、ハンセン病、マラリアなどの伝染病を無くすキャンペーンに力が入れられた。1960年代には貧困の撲滅に力が入れられ、さらに70年代には柔軟でコミュニティー主体の貧困対策を奨励した。1980年代は途上国の経済が後退し各地で「失われた10年」と呼ばれたりした。しかし、白書では、子供のための運動が立て直された10年でもあったと評価している。さらに、1990年代は、一連の世界会議を通して子供の権利が認められ、2000年の目標達成を目指して、大きく前進する可能性を持っているとしている。

 最後に白書は、この50年が戦争や貧困による破壊にもかかわらず、世界的に前進を続けていることを評価し、未来を楽観できるものとして締めくくっている。この楽観論は、幾多の困難を目前にしたユニセフの諦めのない意志と、勇気のあらわれかもしれない

 たとえば、この50年は、確かに、地域ごとに前進が見られたかもしれないが、地域差は拡大する一方で、不公正は拡大してきたように思われる。糞便にわく蛆にすら手を伸ばす飢餓の子供と、豊かな日本の子供との差を説明できる人はいない。

 世界子供白書を読むと、この理解不能の現象に呆然とすることなく、果敢に立ち向かおうとするユニセフの姿が浮かび上がってくる。

 未来を期待し、可能性を模索している人は日本ユニセフ協会(03-3355-3221)まで、一部260円(送料別)で注文できます。

【高山義浩・山口大学医学部学生】


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