■ セルビアの人質問題解決

1995年07月15日


 セルビア勢力は6月18日、拘束していた国連軍要員の最後の26人を解放し、ようやく人質問題は解決した。ソマリア、旧ユーゴスラビアと、近年の国連による軍事介入は、とくに不安定な結果を生み出しているが、どこに原因があるのだろうか。

 最近の国連は、紛争問題に敏感になった国際世論を納得させるため、邦人の保護をかかげるばかりで、紛争解決については明確な政治的プログラムももたずに介入をはじめてしまっていることが多い。しかし、これでは、紛争のどの派閥からも歓迎されることはない。たとえば、旧ユーゴスラビアへの介入では、セルビアは国連軍を勝利への障害と考え、一方でクロアチアは国連がなにもしないことでセルビアの占領地を認めようとしているといい、イスラム勢力は国連軍が人道援助しかしないと失望を表明した。最近、国連軍がうまく機能していないのはここに原因がある。

 やがて、身に危険を感じた国連軍は、自分たちを守ることを第1目標とするであろう。さらに、その目標は危険を及ぼす存在(ソマリアでいえばアイディード将軍)に勝利することへと変容していく。このように、国連軍が、当初の人道援助の支援とは程遠い戦略をかかげるようになってしまう背景には、「介入のための介入」という国連軍の性質がある。そして、最初にそれを招き寄せているのは、サラエボの少女イルマの救出劇のように、NGOとメディアが一体となって世論をたきつけているところが大きい。

 つまり、NGOは純粋に人道的見地から戦場へ赴いても、新たに自国の軍隊に介入の余地を与え、結果的に混乱を助長してしまう可能性があるということだ。かつて、理想に燃えた宣教師が植民地支配の発端となったことを忘れてはいけない。現代のNGOは、援助を行いながらも、先遣隊として紛争の状況を把握し、適切な介入のための助言を軍隊に与えていかなければならないだろう。

【高山義浩・山口大学医学部学生】


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