感染症トピックス 研究会目次


ラテックス凝集試験によるレプトスピラ抗体検査に関する注意の呼びかけ
  
国立感染症研究所細菌部 小泉信夫 渡辺治雄
 
  レプトスピラ感染症は、 東南アジアをはじめとする多くの地域で依然として流行を繰り返しており、 海外渡航をする日本人で罹患する人が認められる(病原微生物検出情報(IASR) Vol.22、 No.1 & No.11参照
→リンク先URL http://idsc.nih.go.jp/iasr/22/251/dj2514.html、 
http://idsc.nih.go.jp/iasr/22/261/kj2611.html )。
 
  また、 わが国に生息する野生のネズミがレプトスピラを保菌しているという報告もあり、 注意を要する疾患である。それ故、 診断にも正確性を要するので検査法につき注意を促したい。
 

  2000年4月〜2001年11月末日までに、 民間検査所においてレプトスピラに対する抗体価が陽性と判定された検体について、 国立感染症研究所細菌部で医療機関からの要請で再試験を行なった結果、 陰性となった事例が6件起きている。これら6件のうち5件は死菌レプトスピラ抗原を用いたラテックス凝集試験(RPLA)を行っていた(1件は不明)。

  これに対し感染研細菌部では抗体価測定を、 レプトスピラ生菌を用いた顕微鏡下凝集試験(MAT)で行っている。MATはレプトスピラの血清型特異的な試験であるが、 生菌を使うこと、 またその操作に習熟を要することから民間では行われておらず、 国内で検査できる機関は限られている。
  またこの6件のなかには、 ハムスターからの感染が疑われるとされた症例も含まれている(小児感染症学会;抄録D10、 p.1259)。その症例においては、 RPLA法で入院時の患者血清(1点だけを用いていた)が、 Leptospira autumnalisL. icterohaemorrhagiae のレプトスピラ死菌抗原に対してそれぞれ40、 80倍の抗体価を示したとされた。この民間検査所で陽性と判定された血清型について、 感染研で再度ペア血清を用いて検査を行なった結果、 ペアでの抗体価の上昇がないことを確認している。
  

  また上述の擬陽性の例の他に1例、 使用したすべての抗原に弱い凝集が見られた検体があり、 感染研で再試験を行ったところ、 一つの血清型に160倍以上で凝集が認められ、 確定診断がついたというRPLA法で偽陰性を示した例もあった。

 
  このようにRPLAキットの特異性に疑問が生じたことから、 現在新しいキットの開発も含めて、 キット製造所と感染研で協議を開始したところである。当面の注意事項として、 民間検査所におけるレプトスピラ抗体検査では、 必ずペア血清を用いて抗体価が4倍以上上昇していることを確認することが重要である。またペアで上昇が見られた場合でも、 できることならばもう1点その後の血清で検査を行い、 抗体価が持続していることを確認することが望ましい。
 
参考資料;感染研ホームページ;IDWR感染症の話[レプトスピラ症]:
http://idsc.nih.go.jp/kansen/k00-g45/k00_47/k00_47.html


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