
私たちは人間で、人間は「動物」です。「動物」という漢字が示す通り、動く物(物体)です。人の身体も、力学的には質量をもった物体として考えることができます。
そして、地球上では常に重力が働いています。重力に負けている状態では身体は動きません。重力に打ち勝つ力を発揮して、はじめて動作が生じます。
動作は次の力の流れによって生じます。




筋肉が力を生み出し、その力が骨に作用し、骨が関節を中心に回転することで動作が起こります。 筋肉は身体の中で力を生み出す唯一の組織です。筋収縮によって発生した力は骨に伝わり、関節の運動として現れます。
骨そのものが動くときの力の定義:
F:力(ニュートン)
m:骨の質量(kg)
a:加速度(m/s²)
「骨という物体を、どれだけ加速させる力か」を表す式
関節の回転力を表す定義:
M:モーメント(回転させる力)
F:骨のに作用する力
l:回転中心から力の作用線までの距離(モーメントアーム)
「どれだけ関節を回そうとする力か」を表す
| 項目 | 力(F) | モーメント(M) |
|---|---|---|
| 何を表す? | 物体を動かす力 | 関節を回す力 |
| 運動の種類 | 並進運動 | 回転運動 |
| 式 | F=m×a | M=F×l |
| 身体での例 | 関節を圧迫する | 肘・膝が曲がる |
理学療法では、なぜある姿勢が楽なのか、なぜ特定の関節角度で動かしにくくなるのかを考える必要があります。その根拠となるのがモーメントです。 計算が目的ではありません。人の身体でモーメントをイメージできることが、この授業で最も重要です。
計算して「答えが出る」ことだけを評価するのではありません。人の身体でモーメントをイメージできるかが重要です。
一つの問題を解く際も、これを患者さんにわかりやすく伝えるんだ、ということを意識してください。
人は重力下で動く物体であり、動作は筋・骨・関節の力学的相互作用で生じます。力とモーメントを区別して理解することが、生体力学理解への第一歩です。