通信指令課による口頭指導のための基礎知識

目次

はじめに

I. 外傷

 1.動物咬症、2.熱傷、3.眼外傷、4.転落、5.高体温/低体温、6.出血

 7.工場での事故、8.刺傷/銃創、9.骨折/脱臼、10.交通事故

II. 症状別

 1.腹痛、2.アレルギー、3.背部痛、4.呼吸の問題、5.胸痛、6.けいれん

 7.糖尿病、8.頭痛、9.心臓がおかしい、10.ものを飲んだ

 11.精神的行動異常、12.具合が悪い、13.脳卒中、14.人が倒れた

III. 緊急性が高い

 1.一酸化中毒、2.心停止、3.窒息、4.溺水、5.感電、6.妊娠/分娩

 7.意識なし/失神

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はじめに

目的指令課員が通報者に電話を通して必要な応急手当てを指導するための基礎的な知識の習得である。


 口頭指導を行うためには、通報者が応急手当を行える状況にあるか、患者との
関係は、やってもらえるか、電話はそばにあるか、患者の状況に応じた口頭指導マニュアルはあるか等の把握も必要である。


 急病と外傷では口頭指導の内容が異なる。急病の場合は、主訴、年齢、主症状
(出血、意識レベルの低下、呼吸困難、胸痛等)、既往症、投薬歴の情報収集が

必要である。口頭指導にあたっては、気道保持、患者の安静保持、救急隊到着前に患者の状態が急変した場合は再度通報を常に留意しておく。一方、外傷の場合は、外傷の発症機序、障害部位、主症状(意識レベル、ショック発症、頭部外傷、出血量、呼吸状態)や周囲の状況(ガソリン、化学物質が漏れでているか、周囲の安全性)の情報収集が必要となる。口頭指導にあたっては、患者、そばにいる人の安全をまず第一に考えながら、止血法、気道確保法等を指導する。しかし、そばにいた人の応急手当により患者の状態が悪化させないように指導することは大切である(頚部保護、動かさない等)。応急手当が必要ない場合でも、救急隊の現場への誘導と到着前の患者の急変時の再度連絡等してもらうように依頼しておくことも大切である。

 小児の場合、特に乳児(1歳以下)では、転落、熱傷、溺水、窒息例が多い。小児の外傷では、重篤な場合は少ないので、周囲に危険がないなら、患児を動かさない。脊椎損傷を伴った外傷では、動かすことによって、悪化させることがあるので、周囲が安全であるなら、動かさない。起き上がって泣いている場合でも、落ち着かせ、平らのところに寝かせ、安静を保ち、救急隊が到着するまで観察を継続する。


 
脊椎損傷を疑わせるものとして
  1)顔面、頭部外傷、
  2)意識がない、
  3)四肢のしびれ、知覚消失
  4)四肢まひ、運動制限
  5)動かすと背中が痛い
  6)通報者による運動マヒがあるとの通報


また、軽傷のように見えても症状が隠されている可能性があるので、たとえ意識
がある小児でも注意深いサポート、観察は大切である(一人での観察より、複数での観察の方が望ましい)。


特に、小児の場合、外傷を起こさないように日ごろから事故予防(防止)に努め
ることが最も大切である。

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I. 外傷
1. 動物咬症
  ほとんどの場合、緊急性はない。しかし、大量出血、咬まれた場所、意識レ
ベルによっては緊急性が生じる。動物の種類や通報時動物がどこにいるかの確認は必要。

口頭指導
 1)観察、気道確保(特に吐き気、嘔吐があるなら)
 2)ショックに対する手当て(ショック状態かの確認も必要)
 3)冷や汗をかいていますか。手足は冷たいですか。意識状態は?。
うつろな状  態ですか。呼吸は普通ですか?早くなってきませんか?脈は触れにくいですか。脈拍数は100/分以上ありますか。
 4)止血法(直接圧迫法)
 5)昏睡体位(脊椎損傷を除いて)、ショック体位。
 6)保温
 7)飲食物を与えない。
 8)救急隊到着前に急変した時、再度通報させる。
 9)ペット等を飼われている場合は、ペット等をつないでおくよう指導する。

 救急隊に危害がおよんだり、処置の邪魔をする可能性があるので。

 蛇に咬まれた場合、咬まれた部位を上げない。氷を使用しない。毒液を抜こうとしない。  
 多くの蛇咬症は生命に危険がない(時間的余裕があるということ)ことを通報
者に知らせ、安心させる。精神的動揺を取り除くことは必要である。搬送拒否の場合でも病院で見てもらうように助言する。

2. 熱傷(熱による熱傷、化学熱傷、電撃症)
 熱傷面積は9の法則を使う(教科書で勉強)。小児の場合は9の法則より、子供
の手のひらが体表面積の1%に相当するので、それで面積の判定を行わせる。
 深さは1度が日焼けの様な症状、2度が水泡、3度が皮膚全層で障害で、白色
黒化、痛みがない等から判断する。
 電撃症は熱傷面積で考えるよりも重篤と考える(深部の障害が大である)。

 顔面熱傷の場合は気道系の合併症を常に考え、急変に備え注意深い観察も必要
である。
 まだ燃えているかどうか確認させ、もしまだ燃えているようなら、安全のた
め、そこから非難させる(救助者の安全が第一である)。

 閉所での火災では、一酸化炭素、他の有毒ガスが発生し、それを吸入する可能
性がある。また、気道系の障害を起こしやすいので、気道確保が重要となる場合もある。
 症状としては、咳、喘鳴、呼吸促迫、嗄声等が見られ、急激な浮腫を起こし、
気道閉塞を来しやすい。
 電撃症の患者が意識がないとの通報があった場合、心停止の可能性が高いの
で、心肺蘇生法の指導も考慮する。
口頭指導
 1)観察、気道確保(特に意識がない場合)
 2)狭い範囲(10%以下)の熱傷はきれいな水で冷やす。
 3)患者の衣服がまだ燃えているなら、水で消したり、毛布に患者を転がして
消させる。燃えているものは脱がさない。消すことが先決である。
 4)熱傷部に何も塗るな。清潔に保つ事が大切である。
 5)家庭内での化学熱傷は救急隊が来るまで水で洗い流す。
  電撃症の場合は、電気による2次災害に注意させる。まだ患者が電源に
触れている場合は、患者に触らせるな。電源が安全に切ることができるなら、まず電源を切らせる。
 6)ショックの手当て
   止血
   昏睡体位(脊椎損傷を除いて)
   保温
 7)工場等での化学物質等の漏出では他隊の出動も考慮する。
 8)飲食物を与えない。酸等の物質を飲んだ場合、水を飲ませ、希釈させる
ことの助言も考慮する(可能なら、意識レベルの低下している場合はだめ)。
 9)救急隊到着前に急変した場合は再度通報させる。
 10)ペット等を飼われている場合は、ペット等をつないでおくよう指導する。 
救急隊に危害がおよんだり、処置の邪魔をする可能性があるので。

小児の場合
 9の法則より、子供の手のひらが体表面積の1%に相当するので、それで面積の
判定を行わせる。湯気、熱湯による熱傷が多い。
 重症度としては、
  年齢(2歳以下)
  部位(手、顔面、会陰部)
  基礎疾患(糖尿病、心疾患、免疫不全)
  外傷を伴っている
  幼児虐待

3. 眼外傷
 眼外傷では、頭部外傷を伴っている可能性を常に考慮する。意識レベルの低下
は、頭部外傷を疑う。
 眼球がさけていたり、眼内容物が出ている場合は、障るな、圧迫させるな。止
血のために、直接圧迫はさせない。患者を座らせ、救急隊が来るまで落ち着かせる。
 異物、化学物質による障害の場合は救急隊が来るまで、室温の水で洗い流す。

 更なる障害を引き起こす可能性が有るので、無理に異物を取り除かない。

 原因としては
  外傷、頭部外傷、熱傷、化学物質、コンタクトレンズ、異物、眼科骨折等

 症状:激しい痛みと不快感(異物等)
    出血(顔面外傷がなければ、まれ)

    眼球破裂であれば、ピンク色の液が漏れることがある。
        何もしないよう指示。
    直接圧迫、バンデージはしないことを伝える。
    刺さっているものは抜かない。

口頭指導
 1)観察、気道確保(吐き気、嘔吐、意識レベルの低下)
 2)楽な姿勢を取らせる
 3) 小さな異物(ごみ、ほこり)や化学物質がかかった場合は、水で洗い
流させる。
 4)内容液が漏れていたり、眼球が裂けている場合は、障らないよう指示する。 
イスに座らせ、落ち着かせる。
 5)ショックの手当て
   保温
   飲食物を与えない
 6)救急隊が到着前に急変した時は再度通報。
 7)ペット等を飼われている場合は、ペット等をつないでおくよう指導する。
 救急隊に危害がおよんだり、処置の邪魔をする可能性があるので。
小児の場合
 両親、家族等と一緒に搬送するのがよい。

4. 転落
 患者の背丈より高い所からの転落や1.8m以上からの転落では、脊椎損傷の可能
性を常に考え、脊椎保護の指導を行う。
  通報者は他人の事が多い。

  病気(てんかん、脳卒中、失神等)による転落もありうるので、既往歴等の
情報収集も必要である。
  転落した高さは重症度の指標となる。

  目に見えるところの障害だけでなく、見えないところの障害の可能性もある
ので、注意深い観察と継続が必要である。
 頭部外傷、顔面外傷を伴ったり、意識障害を伴っている場合は、脊椎損傷を疑
う。周囲の安全を確認し、もし危険がないなら、動かさないでそこで必要な手当てを行うのがよい。


口頭指導
 1)観察、気道確保(意識レベルの低下があれば)。
 2)動かすな。障害部を副木等で固定しない(周囲の安全が確認されている
場合)。
 3)ショックの手当て
   保温
   飲食物を与えない
 4)外出血に対して止血法(直接圧迫法)
 5)救急隊到着前に急変した場合は、再度連絡させる。
 6)ペット等を飼われている場合は、ペット等をつないでおくよう指導する。
救急隊に危害がおよんだり、処置の邪魔をする可能性があるので。


小児の場合
 転落場所が堅ければ(カーペットのない床へのベッドからの転落、カートからコ
ンクリトへの転落、タイル上への転落等)、乳幼児では転落により頭蓋骨骨折や脳障害を引き起こす可能性がある。

5. 高体温・低体温
  高温環境下によって発生する障害を熱中症と呼び、熱中症には、熱射病、熱
疲労、熱けいれん等がある。熱けいれんと熱性けいれんは異なる。
  熱けいれんは、有痛性の筋肉のけいれんを伴う。体温はほぼ正常。

   涼しい所に移動させる。水分をとらせる(吐き気、嘔吐がなければ)。

  熱疲労は、全身倦怠、頭痛、目まい、嘔吐、吐き気、発汗、頻脈、高体温
(41度以下)等が見られる。
   涼しい所に動かす。水分をとらせる(吐き気、嘔吐がなければ)。

  熱射病は、意識低下、皮膚の乾燥、高体温(41度以上)、発汗停止等が見ら
れ、重篤である。
  涼しい場所に移し、水で全身を冷やす。飲み物は与えない。

  
凍傷・低体温
  寒い場所から暖かい所に移動させる。高度の低体温(ぶるぶる震えられない
程度の低体温)では、心臓の刺激性が亢進しているので、乱暴な移動は心停止を引き起こす場合もあるので、注意深く優しく移すことを心がける。全身(特に体幹)を暖める。水分は与えない。
  長時間の低体温は心停止を引き起こす。低体温の状態では死亡確認できず。
体温が上がるまで、心肺蘇生を継続する。
  低体温の状態では、心刺激性が亢進しているので、搬送、移送には十分注意
をする。
  乱暴に動かすと心室細動(心停止)になるかもしれない。

口頭指導
 1)観察、気道確保(意識低下、吐き気、嘔吐があれば)
 2)ショックの手当て
   止血法
   こん睡体位(脊椎損傷なければ)
   保温
 3)飲食物を与えない。(熱けいれん、熱疲労の場合、吐き気、嘔吐がなけ
れば、水分を取らせる)。意識レベルが低下している場合は、水分を与えない。
 4)既往歴、投薬中の薬剤等の情報収集
 5)救急隊到着前に急変した場合、再度電話させる。
 6)ペット等を飼われている場合は、ペット等をつないでおくよう指導する。
救急隊に危害がおよんだり、処置の邪魔をする可能性があるので。


小児の場合
 まれである。指、足、耳のような部位の凍傷が見られる。このような場合は
低体温の環境から遠ざけ、四肢を暖める。
 炎天下での遊び中に脱水になりやすい。吐き気、嘔吐がなければ、水分を取らせ
る。
 こまめに水分をとらせ、脱水にならないように注意することが最も重要である。

6. 出血(外傷による)
  出血には、内出血と外出血がある。外出血は外から見えるが、内出血は外か
らは見えない。
  吐血、下血や性器出血は外出血より重症と考える。

  外出血には、静脈性、毛細血管性と動脈性出血がある。外出血の95%は直接
圧迫法で止血可能である。
  間接圧迫法、ターニケットを用いる方法は指導しない。

  出血量よりも出血のコントロール(止血)することの方が重要。


口頭指導(止血法、ショック発症の症状、気道確保が重要。)
 1)観察、気道確保(意識低下があれば)
 2)直接圧迫止血法。止血できない場合は、さらに強く直接圧迫するよう
指導する。
 3)ショックの手当て
   昏睡体位(脊椎損傷がなければ)、ショック体位
   保温
   飲食物を与えるな。
 4)鼻出血の場合は親指と指で挟み、圧迫止血を指導する。患者は座らせ、
血液は吐き出させる(飲み込ませない)
 5)救急隊到着前に急変した場合、再度連絡させる。
 6)ペット等を飼われている場合は、ペット等をつないでおくよう指導する。
救急隊に危害がおよんだり、処置の邪魔をする可能性があるので。


 小児の場合
  小児の頭部、顔面の出血や裂傷は大量出血につながる可能性がある。小児で
は循環血液量が少なく、また、これらの部位では血管が豊富なため、大量出血につながりやすい。

7. 工場での事故
  周囲の状況はどうか、患者はどこにいるか聞きだすことは重要である。

  救出は専門課に、閉所での救出は危険を伴う。


口頭指導
 1)閉所での事故であれば、救出に行かせる指導はしない。
 2)保安部、保健室から通報があるので、直接事故の概況、患者の状態を見に
行かせる。
 3)患者の状態(主訴)を聞いてから口頭指導を行う。
 4)機械に巻き込まれているなら、電源を切る。
 5)患者を動かさない。安全が確認できているなら。
 6)外出血に対して直接圧迫止血法を指導する。ショック症状があるなら、
ショックの手当てを指導する。
 7)患者情報(既往歴、受傷機転)等の収集
 8)ショックの対応
   止血
   こん睡体位
   保温
   飲食物を与えない。
 9)ペット等を飼われている場合は、ペット等をつないでおくよう指導する。
救急隊に危害がおよんだり、処置の邪魔をする可能性があるので。

8. 刺創、銃創(外傷)

 四肢の刺創は体幹の刺創ほど重篤ではない。

 四肢の刺創の中でも肘や膝よりも末梢の刺創はさらに重篤でない。

 現場の安全確認が最重要である。

 武器が現場にあるか、加害者が近くにいるかの確認をする。

 いつ発生したか確認も必要である。

 事故等を感情的に話をするので、落ち着かせて、話をさせることも大切である。

 外出血の有無、程度、傷病者の人数、意識の有無についても聞く。


口頭指導
 1)通報者の安全確保が第一である。加害者がそばにいる場合は近づかない
ように指導する。
 2)観察、気道確保(吐き気、嘔吐、意識レベルの低下があれば)
 3)外出血は直接圧迫法での止血を指導する。
 4)ショックの対応
  止血術
  昏睡体位(脊椎損傷がなければ)
  保温
  飲食物を与えない。
 5)刺さっているものは抜かない。
 6)現場保存、武器を捨てない。
 7)投薬歴、既往歴等の情報収集
 8)救急隊到着前に急変した場合は再度連絡させる。
 9)ペット等を飼われている場合は、ペット等をつないでおくよう指導する。
救急隊に危害がおよんだり、処置の邪魔をする可能性があるので

9. 外傷(骨折、脱きゅう等)
 骨折、痛み、腫脹、固定性、背部痛、四肢の固定性、外出血等について聞く。

 脊損疑いがある場合は、脊椎の保護を指導する。


口頭指導
 1)観察、気道確保(吐き気、嘔吐、意識レベルの低下)
 2)ショックの手当て
   止血法
   昏睡体位(脊損疑いの場合は除く)
   保温
   飲食物を与えない
 3)動かすな、副木をあてるな
 4)救急隊到着前に急変した場合、再度連絡させる。
 5)ペット等を飼われている場合は、ペット等をつないでおくよう指導する。
救急隊に危害がおよんだり、処置の邪魔をする可能性があるので。


10. 交通事故
 第3者通報が多い。通報者や周囲の方から情報収集をする。目撃者が入れば、事故
概要を聞きだす。ガソリン、他の化学物質等が漏れでている場合は必要な隊を出動させる。複数からの通報の可能性がある。複数傷病者の可能性もある。


口頭指導
 1)ショックの手当て
   止血法
   昏睡体位(脊損疑いなければ)
   保温
   飲食物を与えるな。
 2)危険がなければ、動かすな
 3)副木を当てるな
 4)気道が開放されているかチェック、意識レベルチェック
 5)救急隊到着前に急変した場合、再度連絡させる。
 6)事故現場の保持
 7)ペット等を飼われている場合は、ペット等をつないでおくよう指導する。
救急隊に危害がおよんだり、処置の邪魔をする可能性があるので。
 8)交通事故に関する法令等についても十分な知識をもっておく。
小児の場合
 家族で事故に遭った場合、子供の場合は親しい大人少なくとも1名を乗せ、搬送する。

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II. 症状別
1. 腹痛
 あまり緊急性はない。適切な質問でわかる重篤な事例がある。

 まれに、心筋梗塞の様な心疾患で、上腹部痛を訴える場合がある。

 妊娠可能年齢の女性では、子宮外妊娠による腹痛がある。この場合、ショック症
状をしばしば呈する。

 腹痛には急性と慢性がある。年齢、現病歴、症状(胸痛、失神についても聴取)の聴取が大切。

 腹痛の強さ、期間は重症度の関係しない。

 50歳以上の外傷も、慢性腰痛もない患者が、ショック症状がある場合は解離性動脈瘤を考慮する。


原因疾患
重篤
 心筋梗塞(上腹部痛)、腹部動脈溜(背部痛、冷や汗、失神、ショック、
目まい)、子宮外妊娠(下腹部痛、ショック)
中等度
 虫垂炎、腸閉塞(高齢者に見られやすい)、胃潰瘍穿孔、腎結石、
腹部臓器の慢性疾患
軽度
 胃炎、胃腸炎、骨盤内炎症性疾患、胃潰瘍
 症状としては、鋭いさすような痛み、局所的な痛み、腹部全体の痛み、
腹部膨満、吐き気、嘔吐、下痢、蒼白、冷や汗、軽度の頭痛等の訴えがある。


口頭指導
 1)観察、気道確保(吐き気、嘔吐がある場合)
 2)楽な体位をとらせる。
 3)枕は使わない。
 4)ショックの手当て
   気道確保
   飲食物をあたえない。
   楽な体位をとらせる。
   落ち着かせ、安心させる。
 5)投薬等の情報収集
 6)救急隊到着前に急変した場合、再度連絡させる。
 7)ペット等を飼われている場合は、ペット等をつないでおくよう指導する。
救急隊に危害がおよんだり、処置の邪魔をする可能性があるので。


小児
 子供が腹痛で泣き続けることに両親は耐えられず、そのため、疝痛のある小児は
幼児虐待の状況をもたらす可能性がある。

 睾丸捻転の子供は腹痛のみを訴える場合もある(放散痛のため)

 腹痛をもたらす中等度の疾患は虫垂炎(しばしば破れている)、腎結石、腸閉塞、腸ねん転である。緑色、黄色の嘔吐は胆汁を含んでおり、小腸の閉塞が疑われる。嘔吐が激しければ、脱水を伴いやすい。

 咽頭炎、肺炎、胃腸炎、便秘、ガスでも、腹痛の訴えがある。

2. アレルギー
 アレルギーは異物に対する生体の防御反応である。
重要な症状は、呼吸困難, 嚥下困難である。アナフィラキシーショックは最も重篤な病態で、突然発症する。1時間以上呼吸困難, 嚥下困難の症状がない蕁麻疹、発疹、かゆみはアナフィラキシーにはなりにくい。
 症状から緊急性を評価する。アレルギーを起こした原因物質を探す試みはしな
い。
 アレルギーの原因は蜂、他の昆虫、海産物(特に貝)、ナッツ、蕎麦粉、薬剤
(ペニシリン)等がある。米国ではピーナツバターのアレルギが増加している。
重篤症状
 突然の虚脱、呼吸困難、嚥下困難、唾液分泌亢進、意識消失、呼吸停止。
アナフィラキシーショックで1時間以内に上記の症状(いくつか)が出現する。
軽度症状
 発疹、蕁麻疹、腫脹、かゆみ、腹痛、吐き気。
 
 アレルギーの既往、同様な症状が以前にもあった場合には、アレルギー反応を
疑え。営林職員の中には、ボスミンの自己注射を持っている場合がある。その時は指示されているように使う様に指示する。


口頭指導
 1)観察、気道確保(目、鼻、口の周りの発赤や腫脹、呼吸困難、嚥下困難、
意識レベルの低下があれば)
 2) 患者の状況が悪化しているようなら、電話を接続しておき、いつでも口頭指
導できるように。
 3)枕は使用しない。
 4)ショックの手当て
   気道確保
   飲食物を与えない。
   楽な姿勢をとらせる。
   落ち着かせ、安心させる。
   保温
 5)意識がなければ、気道確保と呼吸状態の観察
 6)投薬歴等の情報収集
 7)救急隊到着前に急変した場合、再度連絡させる。
 8)ペット等を飼われている場合は、ペット等をつないでおくよう指導する。
救急隊に危害がおよんだり、処置の邪魔をする可能性があるので。


小児
 気道が狭く、ちょっとした腫脹で、気道閉塞、狭窄をきたすので、アレルギー反
応による呼吸系症状は早く出現する。食物、虫刺されに対して予期せぬアレルギー反応を起こし、突然意識消失を来すこともある。

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3. 背部痛
 非外傷性の背部痛は一般的で、大部分は軽症である。質問を通して重篤な状態
を把握することは可能である。
 心筋梗塞の様な心疾患等でしばしば背中への放散痛を背部痛を訴えることがあ
る。
 50歳以上の患者で、外傷とか慢性の背部痛の既往がない、ショック症状を呈し
ている場合は、解離性動脈溜を疑う。痛みの強さや期間は重症度の関係なし。
重篤な原因疾患
 転落、腹部動脈溜、解離性動脈溜、神経学的疾患、心筋梗塞
中等症の原因疾患
 腎結石、肋骨骨折、脊椎骨折、
軽症の原因疾患
 慢性背部痛、ヘルニア、腎感染症、腰椎ねんざ

症状
 鋭い刺すような痛み、局所的か腹部全体か、腹部膨満、吐き気、嘔吐、下痢
蒼白、冷や汗、失神、軽度頭痛、四肢のしびれ、


口頭指導
 1)観察、気道確保(吐き気、嘔吐があれば)
 2)枕は使用しない。
 3)ショックの手当て
    気道確保
    飲食物を与えない。
    楽な姿勢をとらせる(外傷性の背部痛は動かさない)
    落ち着かせ、安心させる。
    保温
 4)投薬歴等の情報収集
 5)救急隊到着前に急変した場合は、再度連絡させる。
 6)ペット等を飼われている場合は、ペット等をつないでおくよう指導する。
救急隊に危害がおよんだり、処置の邪魔をする可能性があるので。

目次


4. 呼吸の問題(呼吸器系の症状)
 呼吸の問題は小児、高齢者で重症が多い。

 心筋梗塞の様な心疾患ではしばしば呼吸困難を訴える。

 原因疾患(一次性)
  喘息、肺炎、薬剤加療投予、肺気腫、肺塞栓、うっ血性心不全、急性肺水腫


 原因疾患(二次性)
  仮性クループ、窒息、喉頭外炎、部分的気道閉塞


 その他
  過換気症候群、脳卒中、糖尿病性ケトアチド−シス、けいれん、心停止、
顔面外傷
 症状
  呼吸困難、喘鳴、息切れ、喘ぎ様呼吸、ぜいぜい息をする、不安、
チアノーゼ、死ぬんではという気持ち、咳嗽、
口頭指導
 1)観察、気道確保(吐き気、嘔吐)
 2)落ち着かせ、安心させる。ゆっくり、焦らず呼吸させる。
 3)枕は使わない。
 4)ショックの手当て
   気道確保
   飲食物は与えない。
   楽な姿勢で(座位)
   落ち着かせ、安心させる。
   保温
 5)投薬歴等の情報収集
 6)救急隊到着前急変したら、再度連絡させる。
 7)ペット等を飼われている場合は、ペット等をつないでおくよう指導する。
救急隊に危害がおよんだり、処置の邪魔をする可能性があるので。


小児
 呼吸系の問題は小児では一般的である。なぜなら小児の気管は成人より細い
で、容易に気道閉塞を起こす。9ヶ月ごろまで乳児の呼吸は鼻が中心である。そのため、風邪による鼻のつまりは呼吸困難を起こしやすい。鼻翼の拡大、胸骨窩陥没、気管牽引、シーソ呼吸は気道狭窄、閉塞の主要所見である。
 喉頭蓋炎は減少しているが、呼吸器系の救急疾患の一つに変わりない。犬吠様咳
嗽、吸気性喘鳴、嗄声、咽頭痛、発熱、嚥下困難、進行性呼吸困難等の症状が見られる。

5. 胸痛
 胸痛は冠動脈の閉塞による心筋細胞への酸素供給の途絶が原因で胸痛が出現す
る。心筋梗塞等の心疾患ではしばしば上腹部痛を訴える。
 平均年齢は男で35歳以上、女で40歳以上で起こりやすい。

 35歳以上の男性の胸痛では心筋梗塞を疑え。

 心疾患、高血圧、糖尿病等の既往はその可能性を高める。

 重篤な疾患
  心筋梗塞、解離性大動脈瘤、肺塞栓、心膜炎
 
軽症の疾患
  胸膜炎、肺炎、食道炎、裂孔ヘルニア、ウィルス疾患、肋骨骨折、帯状疱疹

 通報者による症状の訴え
  前胸部痛、圧迫感、締めつけられるような痛み、肺や呼吸器系の疾患との関
連性もある。呼吸で和らいだり、増強したりする鋭い刺すような痛み等
 心筋梗塞、狭心症の胸痛では、締めつけられるような痛み、刺されるような痛み、張り裂けるような痛み、圧迫感等を訴える。首、あご、左肩、歯への放散痛も認めやすい。また、痛みのない心筋梗塞もある。顔面蒼白、冷や汗が見られる場合もある。吐き気、嘔吐、呼吸困難、不安感、恐怖感等の訴えもある。


口頭指導
 1)観察、気道確保(吐き気、嘔吐)
 2)楽な姿勢をとらせる(座位)
 3)胸痛が出現したら、この薬を飲めとの病院から指示が出ている場合もある。
   その時は医師が指示しているように薬を飲むことを助言する。また、 この情報は救急隊にも伝える。
 4)枕は使用しない。
 5)ショックの手当て
    気道確保
    飲食物を与えない。
    落ち着かせ、安心させる。
    保温
 6)いざというときのために、誰かが電話口にいるようにさせる。
 7)投薬歴等の情報収集
 8)救急隊到着前に急変したら、再度通報させる。
 9)ペット等を飼われている場合は、ペット等をつないでおくよう指導する。
救急隊に危害がおよんだり、処置の邪魔をする可能性があるので。

   
小児
胸痛は青年期でも一般的(自然気胸)であるが、学童児には一般的ではない。

 肺塞栓の危険因子
  肥満
  ピル
  脱水
  ネフローゼ
  凝固障害
  骨折
  長時間の臥床

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6. けいれん
 発作的に、不随意に骨格筋が収縮する状態を言い、意識障害を伴うことが多
い。


 心停止患者では、短い無酸素性けいれんが出現する。しばしばけいれんは心停
止の初期症状である。呼吸の有無が確認できていない35歳以上のけいれん患者は心停止も考慮にいれる。


 6歳以下の熱性けいれんは小児では一般的。けいれん発作の時間は短い(長くて
も15分以内)。
 既往歴の解らないけいれん患者の95%は癲癇である。

 脈があれば、けいれん患者に心肺蘇生法は行わない。

 けいれん発作後は気道確保が必要となる場合がある。

 けいれん発作の大半は45-60秒である。心停止によって生じる無酸素性けいれん

 発作はもっと短い。けいれん発作後、多くは意識消失を伴い、その状態は15分
程度継続する。けいれん発作消失後、唾液分泌は亢進しやすい。そのため、この時期の気道確保が重要である。けいれん重積、多発性けいれん発作は緊急性が高い。
 けいれんを起こしそうであることが前もって患者に解り、助けを求めることも
ある。これを前兆という。前兆:けいれんを起こす予見がある。
 原因疾患
 癲癇、頭部外傷、脳腫瘍、髄膜炎、心停止、無酸素状態、発熱等


口頭指導
 1)観察、けいれん発作後気道確保。横向きにし、口の中をきれいにする
(吸引)。
 2)けいれん中、患者を抑制しない。
 3)けいれんを起こしているとき、心肺蘇生法はしない。
 4)舌を噛まないように、口の中に何かを入れる必要はない。
 5)発作後、起こしたり、歩かせたりしない。
 6)外傷をさけるために、患者の周りから危険なものを除く。
 7)枕は使用しない。
 8)ショックの手当て
   気道確保
   飲食物を与えない。
   楽な姿勢を。
   落ち着かせ。安心させる。
   保温
 9)投薬歴等の情報収集
 10)救急隊到着前に急変した場合は再度連絡させる。
 11)ペット等を飼われている場合は、ペット等をつないでおくよう指導する。
救急隊に危害がおよんだり、処置の邪魔をする可能性があるので。


小児
 子供のけいれんは多く、しばしば救急車を呼ぶ。

 子供のけいれんでは熱性けいれんが最も多いが、癲癇も一般的である。

 小児の重積発作では、発作の間も意識はない。

 遷延性のけいれんは脳障害をもたらす(特に血流や脳内酸素や糖が少ない場
合)。

7. 糖尿病
 インスリン欠乏による代謝疾患である。

 インスリンが投与されないと、血糖は徐々に上昇し、糖尿病性ケトアチドーシ
スになる。呼吸は深く大きな呼吸(クスマル大呼吸)で、芳香性、甘い匂いがする。血糖がさらに上昇すると、糖尿病性昏睡に陥る。
 インスリンを過剰に投与したり、食事がとってない状態でインスリンを投与す
ると、血糖が低下しすぎ、意識レベルの低下につながる。
 口頭指導の鍵は意識レベルの低下が見られたら、気道確保を指導することであ
る。
 既往歴についての情報収集が必要。


口頭指導
 1)観察、気道確保(意識レベルの低下)
 2)楽な姿勢をとらせる。
 3)枕は使用しない。
 4)ショックの手当て
    気道確保
    飲食物を与えない。
    楽な姿勢をとらせる。
    落ち着かせる。安心させる。
    保温
 5)投薬歴等の情報収集
 6)救急隊到着前に急変したら、再度連絡させる。
 7)ペット等を飼われている場合は、ペット等をつないでおくよう指導する。
救急隊に危害がおよんだり、処置の邪魔をする可能性があるので。

8. 頭痛
 脳神経外科的疾患による頭痛は全頭痛の20%程度であるが、それに起因する疾
患は致死的な結果を招くので、意識レベル、発語障害、マヒ等について聞くことが重要である。
 もっとも重篤な突然発症する頭痛はくも膜下出血である。


 原因疾患
 
重篤
  髄膜炎、くも膜下出血、硬膜下出血、脳内出血等
   突然の激しい頭痛で、しばしば発語障害、運動マヒを伴う。
 
中等症
  片頭痛、群発頭痛、血管性頭痛等
 軽症
  緊張性頭痛等


 症状
  発語障害、運動マヒを伴った突然の激しい頭痛は重篤である。
吐き気、嘔吐を伴うこともある。片頭痛の既往を聞く事も大切。


口頭指導
 1)観察、気道確保(吐き気、嘔吐があれば)
 2)楽な姿勢を取らせる。
 3)飲食物を与えるな。
 4)投薬歴を聞く。
 5)救急隊到着前に急変した場合、再度連絡。
 6)ペット等を飼われている場合は、ペット等をつないでおくよう指導する。
救急隊に危害がおよんだり、処置の邪魔をする可能性があるので。


 小児
 髄膜炎は小児では大人よりも見られる。

 頭痛で発熱を伴っているなら、呼吸状態の注意深い観察と必要な手当てを指導する必要がある。

目次


9. 心臓がおかしい
 これは主訴ではないので、主訴は何か問いただす。

 胸痛があるか聞く。

 既往歴等の情報収集に努める。

 埋め込まれたペースメーカ、除細動の機能不全かもしれない。

 何の症状もない場合は、心拍数を計ってもらう。多くの心臓の問題は頻脈の場
合が多い。脈が遅いと意識消失するかもしれない(40/分以下)。
 うっ血性心不全では呼吸困難、発汗、脱力感の訴えがある。飲んでいる薬剤等
(利尿剤)の情報収集を行う。
原因疾患
 不整脈、頻脈、心筋梗塞、埋め込み型除細動の機能不全、

症状
 埋め込み型除細動の放電、胸痛、呼吸困難、心疾患に関連した症状
 不整脈、頻脈(動悸)


口頭指導
 1)観察、気道確保(吐き気、嘔吐あれば)
 2)枕は使用しない。
 3)ショックの手当て
    気道確保
    飲食物を与えない。
    楽な姿勢を取らせる。
    落ち着かせる、安心させる。
    保温
 4)投薬歴についての情報収集
 5)救急隊到着までの急変時、再度連絡させる。
 6)ペット等を飼われている場合は、ペット等をつないでおくよう指導する。
救急隊に危害がおよんだり、処置の邪魔をする可能性があるので。


 小児
 うっ血性心不全、チアノーゼ、不整脈をもたらす先天性心疾患が多い。

 その多くは頻脈(200/分以上)である。症状としては、顔色不良。

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10. ものを飲んだ(誤嚥、誤飲)
 誤って飲む場合と意図的に飲む場合がある。意図的に飲む場合は12歳以上に
多く、12歳以下では誤って飲む場合が多い。過量の摂取は患者にとって危険であることを認識する。また、現場の安全性に関して通報者に確認することが必要である。
 他隊、警察への連絡が必要な場合がある。

原因
 家庭内で誤って飲むのは子供と高齢者が大半である。高齢者では飲む薬と間
違って飲む場合等がある。助けを求めるジェスチャーや自殺目的で過量に服用する場合がある。精神的な鬱的状態と関連がある。
  子供の家庭内での事故等は、大人の薬や中毒性物質(洗剤、タバコ、電池
等)等によるものが多い。


口頭指導
 1)観察、気道確保(吐き気、嘔吐、意識の低下)
 2)ショックの手当て
   気道確保
   楽な姿勢をとらせる。
   落ち着かせ、安心させる。
   保温
 3)嘔吐を誘引させない。酸、アルカリのものを飲んだ場合は、ミルク、水を飲
ませる(医師等に確認した方がよい)。それ以外(酸、アルカリ以外)は何も飲ませない。
 4)患者が更に外傷などしないようにする。
 5)救急隊到着前に急変した場合は、再度連絡させる。
 6)ペット等を飼われている場合は、ペット等をつないでおくよう指導する。
 救急隊に危害がおよんだり、処置の邪魔をする可能性があるので。


 小児
  家庭内では致死的にならない物質の誤飲が一般的。酸、アルカリ性、石炭
酸、鉄剤、抗うつ剤、心循環系薬等を飲んだ場合は重篤に成りやすい。

11. 精神的行動異常
  精神障害、行動異常は分裂病、躁病、鬱病等と関連がある。

  基礎的な病気によるものを行動異常と間違える場合がある。糖尿病、癲癇に
おいて、その発作中または発作後に精神障害、行動異常が見られ、誤りやすい。既往歴等の情報収集が必要である。
  精神障害/行動異常のある患者は自分自身、他人に対して危害を加える可能性
があることを忘れるな。何か危険なものを持っているか確認する。自殺を考えている場合は、マニュアルにそって話をする。何かその原因があるか確認する。
 症状
  異常な行動をとる。
  暴力行為
  自殺企図
  鬱


口頭指導
 1)観察、気道確保(吐き気、嘔吐、意識低下)
 2)患者の保護
 3)危険なものを捨てさせる。落ち着かせる。
 4)飲食物は与えない。
 5)投薬歴等の情報収集
 6)救急隊到着前に急変した場合は再度連絡。
 7)ペット等を飼われている場合は、ペット等をつないでおくよう指導する。
救急隊に危害がおよんだり、処置の邪魔をする可能性があるので。


小児
 8歳以下の子供の精神学的な行動異常は中毒、神経疾患、感染、幼児虐待が関与
していることが多い。

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12. 具合が悪い
  主訴が何かをはっきりさせたり、既往歴、重要な他の症状を聞く。


 症状
  既往の病気との関連性がある。吐き気、嘔吐、脱力感、脱水等。
重症である可能性もある。状況から興奮している通報者を落ち着かせ、安心させる。


口頭指導
 1)観察、気道確保(吐き気、嘔吐、意識低下)
 2)枕は使用させない。
 3)ショックの手当て
    気道確保
    飲食物を与えない。
    楽な姿勢を取らせる。
    落ち着かせる。安心させる。
    保温
 4)投薬歴等の情報収集
 5)救急隊到着前に急変した場合は再度連絡。
 6)ペット等を飼われている場合は、ペット等をつないでおくよう指導する。
救急隊に危害がおよんだり、処置の邪魔をする可能性があるので。

13. 脳卒中
  脳卒中には、頭蓋内出血と脳梗塞がある。前者はさらにくも膜下出血と脳出
血に分けられる。脳卒中は血栓、高血圧性脳出血、破裂動脈溜等による血流の途絶がよってもたらせる脳の障害で、重篤である。


 原因疾患
  脳動脈の閉塞、破裂動脈溜、解離性動脈溜、脳内出血

 症状
  発語障害、運動機能の低下(片側)、マヒ、脳卒中の既往、意識レベルの
低下(低ければ低いほど重症)


口頭指導
 1)観察、気道確保(吐き気、嘔吐、意識低下)
 2)楽な姿勢を取らせる。
 3)枕は使用しない。
 4)ショックの手当て
    気道確保
    飲食物は与えない。
    落ち着かせる。安心させる。
    保温
 5)投薬歴等の情報収集
 6)救急隊到着前に急変した場合は再度連絡。
 7)ペット等を飼われている場合は、ペット等をつないでおくよう指導する。
救急隊に危害がおよんだり、処置の邪魔をする可能性があるので。
  歩行が困難かもしれないので、歩行させるな(他の障害をもたらすかもし
れない)


小児
 健康な小児ではまれ。

 白血病、代謝性疾患、腎不全ような疾患を有する子供では、脳血管障害の危険
性はある。
 小児で見られた場合は特に気道確保に注意が必要である。

14. 人が倒れた(意識なし)
 第3者通報で、状況が解らず、救急車を呼ぶ。

 必要な情報等を通報者から得ることが困難である。

 患者が心停止かどうか確認させる。呼吸しているか、座っているか、立ってい
るか、寝ているか、何か話をしているか、動いているか確認させる。
口頭指導
 1)患者のところに行かせ、意識、気道確保、呼吸の有無を観察させる。
 2)観察、気道確保(吐き気、嘔吐、意識低下)
 3)枕は使用しない。
 4)ショックの手当て
    気道確保
    飲食物を与えない。
    楽な姿勢を取らせる。
    落ち着かせる、安心させる。
    保温
 5)救急隊の誘導
 6)救急隊到着前に急変した場合は再度連絡。
 7)ペット等を飼われている場合は、ペット等をつないでおくよう指導する。
救急隊に危害がおよんだり、処置の邪魔をする可能性があるので。

目次


III)緊急性が高い
1. 一酸化炭素中毒
 現場の状況、患者がどこにいるか、機械に挟まれているか等を明らかにする。
誰かに状況等の確認に行かせ、誘導も行わせる。第3者通報が多い。
 化学物質、ガスが充満しているような閉所は危険である。工場等での事故が一
般的である。救助は専門の救助隊に任せるべきである。
 一酸化炭素は無色無臭の危険性の高い気体である。中毒死の中で最も多い。

 一酸化炭素は血液中のヘモグロビンと結合し、細胞レベルでの低酸素を引き起
こす。
 一酸化炭素の治療は高圧酸素療法である。

 意識レベルの確認が重要で、意識レベルの低下、意識がなければ、重篤であ
り、一刻も早い搬送を指示する。
 事故の概況等を聞きだし、もし現場が危険な状況にあるなら、通報者の安全を
考え、避難させる。他隊の要請も考慮する。
 一酸化炭素の原因
  煙、閉所での不完全燃焼、工場での事故、排気ガス、屋内火災

 症状
  頭痛、耳鳴り、吐き気、嘔吐、意識レベルの低下が一般的
  他の事故等による場合、呼吸困難、化学熱傷、吐き気、嘔吐、
  意識レベルの低下や多数傷病者が出る場合もある。


口頭指導
 1)危険な現場から患者を避難させる。
 2)観察、気道確保(意識レベルの低下)
 3)化学熱傷がある場合は水で洗い流す。
 4)閉所の場合、救助は専門家にまかせる。
 5)歩行困難かもしれない。歩かせるな。
 6)枕を使用するな。
 7)ショックの手当て
    気道確保
    飲食物を与えるな。
    楽な姿勢を取らせる。
    落ち着かせる。安心させる。
    保温
 8)救急隊等の誘導を依頼する。
 9)救急隊到着前に急変した場合は再度連絡。
 10)ペット等を飼われている場合は、ペット等をつないでおくよう指導する。
救急隊に危害がおよんだり、処置の邪魔をする可能性があるので。

2. 心停止
 目撃のある心停止は助かりやすい。特に、ちょっと前までは全く健康であった
様な場合は助かりやすい。また、突然心停止になった場合、呼吸が残っている可能性がある(喘ぎ様呼吸)。この呼吸をみて、通報者は呼吸があると言うかもしれない。その場合は、呼吸はいつもと同じような呼吸をしていますか、正常の呼吸ですかの質問をし、再度確認させる。


原因
 心室細動、心筋梗塞、外傷、慢性疾患、感電、窒息、溺水


症状
 意識がない、呼吸がない、反応がない、顔色不良

 呼吸時に変な音がする、いつもと違う呼吸である(下顎呼吸、喘ぎ様呼吸)。


口頭指導
 1)心肺蘇生法、異物除去法を指導する。目撃があれば、特に助かりやすい。

 成人と違い、小児では心停止は10%程度、多くは呼吸停止から心停止に移行し
たものである。できるだけ早く気道確保、人工呼吸が行われなければ、救命できる可能性は低くなる。脈の確認は困難である。


  口頭指導だけでなく、救急救命士が早く除細動ができるように早い出動指
令、到着前の患者情報収集等も重要である。
 2)ペット等を飼われている場合は、ペット等をつないでおくよう指導する。救
急隊に危害がおよんだり、処置の邪魔をする可能性があるので。

目次


3. 窒息
 上気道の完全閉塞では、呼吸することも話すことも咳をすることもできない。

気道の開通が得られなければ、1-2分で心停止に、4-6分で不可逆的な脳の障害をもたらす。


 不完全閉塞の患者には異物除去の口頭指導は要らない。声が出るなら、興奮さ
せない。
 不安を取り除く。

 咳ができるなら、咳をさせる。患者の状態が悪化している場合は何を指導すべ
きか慌てずよく考える。
 不完全閉塞では、ゼイゼイ、ピーピーとか音が聞こえる。


 6ヶ月から3歳の乳幼児や嚥下機能、咳嗽反射の低下した高齢者や脳血管障害患
者でおこりやすい。
 突然の喘鳴や気道閉塞症状では必ず気道内異物を疑う。


 原因
  食べ物(ピーナツ等の豆類)、小さなおもちゃは上気道閉塞の主な原因。
  喘息、喉頭蓋炎、重症のアレルギー反応でも窒息所見は見られることが
ある。


 症状
  拇指と示指の間で喉の辺りをつかむ(V型)(チョークサイン)。


  顔面蒼白。皮膚の色が変わったと表現する場合もある。


  意識はない。食べている時に急におかしくなったと話す場合もある。


口頭指導
 1)異物除去法の指導
 2)脈があるなら、心マッサージは避ける。
 3)枕は使用しない。
 4)ショックの手当て
    気道確保
    飲食物は与えない
    楽な姿勢を取らせる。
    落ち着かせる。安心させる。
    保温
 5)完全閉塞(話せない、呼吸がない、)でなければ、異物除去法の指導は
要らない。
 6)投薬歴等の情報収集
 7)完全閉塞になったら、すぐに連絡できるように、電話のそばにいるように
指示。
 8)救急隊が来るまで、気道が開通するまで、異物除去を行え。
 9)救急隊到着前に急変した場合は再度連絡。
 10)ペット等を飼われている場合は、ペット等をつないでおくよう指導する。
救急隊に危害がおよんだり、処置の邪魔をする可能性があるので。

4. 溺水
 呼吸停止のみの場合は助かりやすい。飛び込みでは頚椎損傷を伴っていること
を念頭に入れる。危険がないなら、動かさない。浴槽、プール、運河、池、海水があればどこでも起こりえる。浅い所での飛び込みは頚椎損傷の可能性が高い。傷病者がすでに救出されているか、確認が必要である。


口頭指導
 1)安全に救出できるように努力する(二次災害の防止は最重要)
 2)観察、気道確保(吐き気、嘔吐)
 3)楽な姿勢を取らせる。頚椎損傷が疑われる場合は、動かすな。
 4)ショックの手当て
    気道確保
    飲食物を与えない。
    楽な姿勢を取らせる。
    落ち着かせる。安心させる。
    保温
 5)救急隊到着前に急変した場合は再度連絡。
 6)意識がない、呼吸がない場合は、心肺蘇生法を指導
 7)ペット等を飼われている場合は、ペット等をつないでおくよう指導する。
救急隊に危害がおよんだり、処置の邪魔をする可能性があるので。


小児
 嘔吐が起こりやすい。また、ぬれていると体温も低下しやすいので、ぬれた
ものは脱がす。予防が最も大切であり、危険な場所で泳がせない。水泳教室に行くかせる。心肺蘇生法の習得等が大切である。

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5. 感電
  心停止を念頭にいれる。しばしば転落に合併する。


 現場の安全性に関する情報収集をする。周囲のものに感電の危険性を助言し
、事故に巻き込まれないようにする(二次災害の防止が最重要)。また、現場の安全性について救助隊にも情報を教える。電撃症を伴いやすい。


口頭指導
 1)電源や電気が流れている水に近づかないように助言する。可能なら、電気を
止める。
 2)観察、気道確保(意識レベルの低下)
 3)枕を使わない。
 4)ショックの手当て
   気道確保
   飲食物を与えない。
   楽な姿勢を取らせる。
   落ち着かせる。安心させる。
   保温
 5)転落の場合は、動かさない。
 6)救急隊到着前に急変した場合は再度連絡。
 7)できるだけ早く関係機関(警察、消防等)に連絡をとる。
 8)ペット等を飼われている場合は、ペット等をつないでおくよう指導する。
救急隊に危害がおよんだり、処置の邪魔をする可能性があるので。



6. 妊娠/分娩
 妊娠期間は前期(1-3ヶ月)、中期(4-6ヶ月)後期(7-ヶ月)、妊娠24週未満の
妊娠の中絶を流産、24週以後37週までの胎児の娩出を早産という。

 妊娠が進むにつれ、合併症の重症度は胎児と母体とともに増す。
 妊娠は病気ではない。

中期までの妊娠中の合併症は婦人科的問題としてとらえる。たとえば、出血な
ら、ショックの手当てを指導する。
 今にも生まれそうな場合は、初産であれば陣痛間隔が2分以下、経産であれば5
分以下。
 痛みが持続的になったり、胎児の一部が見えた場合も今にも生まれる兆候であ
る。


分娩
 1)足を交差させたりして分娩を妨げるようなことはしない。
 2)腰から下の衣服は脱がせる。
 3)ベッド、床に寝かせる。枕で腰を上げておく。
 4)陣痛中深い呼吸をさせる。押したりしない。


妊婦の問題
  一般的には出血と痛みである。ショックの症状は顔面蒼白、意識レベルの
低下、悪寒、発汗、冷汗等である。


 1)ショックの手当て
   気道確保
   飲食物を与えるな
   楽な姿勢を取らせる。
   保温


妊婦と胎児共通
 1)観察、気道確保(吐き気、嘔吐、意識レベルの低下)
 2)枕を使用しない。
 3)ショックの手当て
   気道確保
   飲食物を与えるな。
   楽な姿勢を取らせる。
   落ち着かせる。安心させる。
   保温
 4)投薬歴等の情報収集
 5)救急隊到着前に急変した場合は再度連絡。
 6)ペット等を飼われている場合は、ペット等をつないでおくよう指導する。
救急隊に危害がおよんだり、処置の邪魔をする可能性があるので。

7. 意識なし/失神
  失神は脳血流が急激に減少したために生じる一過性の意識消失である。


口頭指導
 1)観察、気道確保(吐き気、嘔吐、意識なし)
 2)仰向けに寝かせ、呼吸を観察。嘔吐の場合は横向きに。
 3)枕は使用しない。
 4)ショックの手当て
   気道確保
   飲食物を与えない。
   楽な姿勢を取らせる。
   落ち着かせる。安心させる。
   保温
 5)投薬歴等の情報収集
 6)救急隊到着前に急変した場合は再度連絡。
 7)ペット等を飼われている場合は、ペット等をつないでおくよう指導する。
救急隊に危害がおよんだり、処置の邪魔をする可能性があるので。

終わりに


本稿が各地域での指令課での口頭指導のマニュアル作成に当たっての参考になれ
ば幸いである。

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