9. 異なる設備や収容能力
夕方6時になると、救急隊に一通のファクシミリが届く。通信指令課から送られてくる
その一枚の紙には、各救急病院のその日の当直医と診療科目、空きベッド数が書かれて
いる。
救急隊が現場に着くと、ほとんどの家族が「どこの病院に行くんですか」と不安そう
に聞いてくる。心配する家族には不本意かもしれないが、私たちは患者さんの観察や必
要な処置をしながら、いつからか、どうしてこのようになったのか、今までの病歴ーな
どを質問していく。その上で患者さんの緊急度や重症度、そして病態を評価し、適切な
病院を選定するのである。例えば脳出血で重篤な患者さんを脳外科のない病院へ搬送し
たら、それは悲劇としか言いようがない。
救急病院がほかの病院と大きく異なる点は一刻を争う患者さんが、いつ、どんな症状
で来るのか全く予想がつかないというところにある。
意識障害の患者さんといっても、原因はいろいろと考えられる。精神疾患で意識がも
うろうとしているかもしれないし、薬物中毒が原因かもしれない。あるいは、おなかの
中で出血しているのかもしれないし、脳出血や心疾患だって考えられる。そこを瞬時に
鑑別して治療するのが救急病院である。
まさに、救急病院は突然の病気や事故に倒れ、危機を感じた患者さんや家族にとって
の駆け込み寺と言える。
しかし、救急病院といっても、救急部門の規模や設備、収容能力が異なっており、必
ずしもすべての患者さんに対応できるというわけではない。そこで、きょうはどのよう
な患者さんに対応でき、何人まで収容できるのかを各病院は消防本部に連絡するのであ
る。
心強いこの病院情報を握り締め、今夜も救急隊は走る。そして、病院では医師や看護
婦をはじめとする多くの医療スタッフが待っていてくれる。
他県では救急患者の「たらい回し」がしばしば報じられるが、秋田市では皆無に等し
い。それは各救急病院の理解と協力のおかげと言える。
(秋田市消防署・救急救命士・清野洋一)