49. 「過呼吸」の処置に効果
毎日のように走っている救急車を見て、皆さんは「どんな患者が乗っているだろう
か」と思われるだろう。頭痛、発熱、骨折など搬送される患者の病態はさまざまだ。そ
の中で、あまり知られていないが、意外に多い疾患を紹介する。
深夜、患者の夫が血相を変えて走り寄ってきた。「こっちだ、急いでくれ。」アパー
トの一室に入ると、20代半ばと思われる女性が居間のソファに倒れている。意識はある
ものの息遣いが荒い。「胸が苦しくて----。手もしびれてきて----。」「あまり、ハー
ハーしないで、ゆっくり呼吸してください。」ほかに苦しいところがないか尋ねたが、
息苦しさのためか答えられない。
しかし脈拍、血圧などは正常で、過呼吸(深く速い呼吸)以外には異常は認められな
い。興奮冷めやらぬ夫から状況を詳しく聞くと、夫の帰宅時間が遅いことが原因で言い
争っているうちに、急に呼吸が荒くなり、胸の苦しみを訴えだしたという。
私たちは、発症状況や訴えから過換気症候群と推察した。生命に別条がないことを説
明して不安を取り除き、呼吸を制御するために患者の口に紙袋をかぶせながら搬送。病
院に着くころには手のしびれもなくなり落ち着きを取り戻していた。病院でも、やはり
過換気症候群と診断され、大事には至らなかった。
人体は呼吸を通して酸素を取り入れ、二酸化炭素を吐き出すが、発作的な過呼吸に
よって血液中の二酸化炭素が正常な値より低下し、息苦しくなるのが過換気症候群(過
呼吸症候群)である。心臓がドキドキしたり、手足のしびれ、めまいを訴えたり、ある
いはテタニーといって手の指が硬直、けいれんしているような状態になったりもする。
時には意識障害をきたすなど症状は多様である。
20歳前後の女性に多く、原因としては興奮、不安などの精神的要素が強いが、いずれ
も過呼吸発作がなくなれば症状は改善するので、患者を落ち着かせ、口に紙袋などを当
てて自分の吐く息(二酸化炭素)を再び吸わせると効果がある。今回のケースも妻が発
作を起こしたことで、夫も取り乱し、それがますます妻の不快感をあおり、さまざまな
症状を生じさせたものとみられる。緊急、重篤な疾患ではないので、冷静に対応してほ
しい。
(秋田市城東消防署・救急救命士・保坂重彦)