19. 重要で基本的な手当て
「皆さんの目の前で身近なだれかが突然、倒れてしまったとします。片方の手足にま
ひがあり、意識がなく荒々しいいびきが間こえます。さてこんなとき、まず何をすべき
でしょう」
救命講習会の実技はよくこんな質問から始まる。受講者はしばらく考え「脳卒中だか
ら絶対に動かさない方がいい」「まず親類や隣の家などに知らせ、人を集めるべき
だ」、あるいは「かかりつけの医者を呼んだ方がいい」などとさまざまな答えを返す。
事実、私たちがこのような状況に陥った患者さんの所へ行くと、何の応急手当ても施
されないまま放直されていることもある。
そこで今回は意識のない重症な患者さんに対して行ってほしい、最も重要で基本的な
手当てについて述べてみたい。
もし倒れている人を見たら、ます呼ぴ掛け、肩をたたき、意識があるかどうかを確認
してほしい。決して人ごとだと素通りせすに思い切って呼び掛けてほしい。もし意識が
なければ、その人はいかなる原因であっても、あごをコントロールする筋肉が緩む。
従って、あお向けに寝かされたり、枕(まくら)をあてがわれたりして、あごが胸につ
くような姿勢になっていると、下あごについている舌がのどの奥に落ち込み、のどをふ
さいでしまう。その結果、呼吸困難になり、ときには窒息することもある。
意識がないと分かったらまず口を開け、口の中に異物がないかを確認する。もしあっ
たら指にハンカチを巻き、異物をかき出すようにぬぐい取る。幼児なら口をつけて吸い
取ることもできる。
次に患者さんの下あごの先端(おとがい部)に指を当て、これを垂直に持ちあげる。
これが気道確保である。これで口から肺までの空気の通り道が開通する。これだけで患
者さんは楽になり、一時的に止まっていた呼吸が可能になることも多い。極度に疲労し
た人を見て「あごを出した」というか、これは酸素をより多く取り入れようとする生理
的な反応なのである。
しかし、確実に息をしているのか、しっかりと確かめなければならない。そのために
は、気道確保をしたまま、患者さんの呼吸する音が間こえるか、吐く息が感じられる
か、胸やおなかの動きが見られるかどうかを5秒間で確認する。もし呼吸がなければ、直
ちに人工呼吸を実施しなければならない。
(秋田市城東消防署・救急救命士・菊地正人)