保育園での緊急事態
保育園には多くのお子さんがいらっしゃいます。ここでは、保育園の先生方に知っていてもらいたい内容を少しづつ書き加えて行きたいと思います。又、お役に立つ内容は他のページにもあると思います。是非立ち寄って頂ければありがたいです。
救急はいつ起こるか解りません。一生懸命毎日気をつけ、何も起こらない園での生活をしていますと、いつの間にか甘さがでてきます。その時、事故は起こるのです。まさに”天災は忘れた頃にやってくる”です。
心肺蘇生法の講習会を開催した後で、受講した先生の保育園で子供が窒息したことがありました。受講されていたため、しっかり応急手当をされ、子供も元気に退院されました。その時、応急手当をされた先生に聞いてみますと、まさか自分が行うなんて思ってもいなかったと言われました。新聞紙面ではいろんな事故、事件の記事が出ています。多くの方はそれを読み、かわいそうね!といった気持ちは抱かれるでしょう。でも恐らく、そんなことは自分の園では起こらないと思われています。しかし、現実には起こりえる話しなのです。”人のふり見て、我がふり直せ”です。新聞紙面に出ている事件事故から自分のところでこんなことが起こったら、どう対応するか園の先生方で話し合って下さい。その積み重ねがあって初めて、子供が安心して生活できる保育園になるのだと思います。
不測の事態が起こったとき、我々は慌てますし、頭の中が真っ白になり、どう対応してよいか判断できなくなります。そうならないように、しっかりした緊急時の対応は作っていただきたいと思います。
小児(1歳以上〜8歳未満)の心肺蘇生法
下図は保育園で子供が”ぐたっ”として倒れているのを発見した時の対応を私なりに考えて見ました。
あなたは2歳綾子ちゃんが倒れているのを発見しました。さあ、どうしますか?

解説
日常的に蘇生法を行うものと市民では、小児の年齢区分が異なっています。下表を見てください。
| 乳児 | 小児 | 成人 | |
|---|---|---|---|
| 日常的に蘇生法を行もの | 1歳未満 | 1歳以上〜思春期 | 思春期〜 |
| 市民 | 1歳未満 | 1歳以上〜8歳未満 | 8歳以上 |
ここでは、綾子ちゃんは2歳ですので、小児用心肺蘇生法の解説を行います。
1)まず意識の確認です。

大声で呼んだり、肩を叩いて、反応を見ます。
2)意識がなければ、誰か!綾子ちゃんが倒れている!早く!誰か来て。と大声で叫びます。
3)先生、どうしたのと数名の同僚が駆けつけてきました。そこであなたは?
4)落ち着いて、綾子ちゃんは意識がないので、119番通報して、救急車を呼んでください。先生はAEDを持ってきて下さい(保育園にあればの話です。小児の場合は、AEDを使用する可能性は低いのですが、流れを理解しやすいように、119番通報とAEDをセットにして覚えましょう。但し、一人しか居ない場合は2分間心肺蘇生を行ってから、119番通報です。先生は救急車の誘導に行ってください。先生は他の園児が怪我をしないように、見ていてください。先生は園長先生と家族に連絡してください。
いろいろ書きましたが、少なくとも上で示す程度の先生がいればいいですね。でも人が多ければ、誰かがその場を仕切らなければ、うまく流れていきません。その点は普段からの緊急時の対応について話し合い、共通の認識を持っておく必要があります。
家族への連絡は119番通報した電話からは行わないようにしましょう。119番通報した後で、救急隊から状態等の問い合わせがあるかも知れませんので、その回線は空けておきます。
一人の場合、心肺蘇生を2分間行った後で、119番通報です。よく考えて見てください。電話をかけに行っているとき、心肺蘇生はできないのです。じゃ、どうすればよいでしょうか?
一つの方法としては、いつも携帯電話(電話子機)を側に持っておくことです。これですと、その場から、胸骨圧迫を行いながら、電話はできますし、遊び場であっても園の外に出かける時だって直ぐに連絡できます。
この流れを見て、気づかれた点が他にもあると思います。119番通報を現場で行っている点です。園という一つの組織の中で起こったことを責任者(園長)が知らないのはおかしいかもしれません。多くの園では119番通報は園長のような責任者が行うようになっていると思います。園長がいつも大声で呼べば、直ぐ来てくれるのであれば、それでもよいでしょう。しかし、いつも来てくれるとはかぎらないのであれば、いつ起こるか解らない緊急時の対応としては望ましくありません。綾香ちゃんのように意識がない状態は一刻を争う事態です。そのための連絡に1秒でも時間を無駄にしたくはありません。すばやい対応が必要です。一刻を争わないような状況であれば、園長先生に連絡をして、園長先生の判断で119番通報するのは構いませんが、一刻を争う事態では発見者の判断で119番通報できるような対応を行ってほしいと思います。また、いろんな人が間に入ると言葉の伝言ゲームとなり、正しく綾香ちゃんの状況が伝わらない可能性もありますので、現場に居る人が話をするのが一番良いです。
○○保育園といえば、救急車は来ると思いますが、玄関前で立ち往生してしまいます。必ずサイレンが聞こえたら、誘導に出てください。中には、サイレンが聞こえると、ほっとして、手が止まったり、子供を抱えて玄関まで出てくる人がいますが、決してそんなことはしないで下さい。サイレンの後はもう直ぐつくから、それまではがんばってという救急隊からのメッセージです。必ず助けたいとの熱い気持ちのこもったバタンは直接手渡しで救急隊に渡してください。
連絡だけでもこんなにいろんなことがあると思われていましたか?これを気に緊急時の連絡に関してもう一度話し合いをしてください。もう一つ知ってもらいたことがあります。皆さん方の保育園まで救急車が来るまでどのくらいの時間がかかるのか?。たとえ2分であっても、その時に救急車が他に出動している事もありますので、安心はできませんが、
5)気道確保(頭部後屈あご先挙上法)をして、普段通りの呼吸をしているか10秒以内に確認します。

6)普段通りの呼吸がない、喘ぎ様の呼吸、10秒以内で判断できない場合は、呼吸がないと判断します。
7)意識がなく、呼吸がなければ、心停止と判断し、心肺蘇生法を行います。
8)人工呼吸を行います。
1秒かけて息を吹き込みます。これを2回行います。1歳未満と1歳から8歳まででは若干異なっています。一度勉強してください。私のHPにも記載していますので、他のページも見てください。
保育園では家庭よりも心肺蘇生を行う可能性は高いですので、感染防止器材を是非準備していただきたいと思います。子供の心停止は多くは呼吸器系の原因から、酸素不足になり、心停止する可能性が高いです。つまり、酸素化を図ることは非常に重要ですので、躊躇しないで人工呼吸できるように園に感染防止器材を準備してください。個人的には、鼻と口の両方から吹き込めるポケットマスクは吹き込みやすいように思います。
感染の危険性等から人工呼吸を躊躇する場合は、人工呼吸は省略して、直ぐに胸骨圧迫を行います。

鼻をつまんで、大きく口を開け、綾香ちゃんの口を覆います。1秒かけて、吹き込みます。これを2回行います。
綾子ちゃんでも、やっぱり感染が怖くできない場合や行うかどうか悩んでいる場合、
そのまま何もしない時間があるのは、やはり望ましくありません。その場合は、人工呼吸は省略して胸骨圧迫のみを行います。
感染防止器材を園に先生各自分準備しておきましょう。準備するのであれば、ポケットマスクが良いと思います。鼻と口の両方から息を吹き込めますので、人工呼吸しやすいと思います。


ポケットマスクの持ち方にはいくつかあります。複数人が居て、人工呼吸のみを担当するのであれば、上左写真が胸骨圧迫の邪魔にならないので、良いかもしれません。
上左写真のように両手の親指全体をマスク上におき、他4本は下顎角より後ろ側におき、引き付け、顔に密着させます。これによって、マスクと顔は密着し、吹き込んでも隙間から漏れなくなります。また、空気の通り道(気道)も確保されます(下顎挙上法)。ポケットマスクの吹き込み口から息を1秒かけて吹き込みます。目で胸に空気が入ったかどうか確認します。
上右写真は、ポケットマスクの上半分を親指と人差し指をC字にして顔面に密着させます。マスク下半分は親指全体で押さえ、他4本指を下顎において、親指側に引き付け、密着させます。これによって、気道確保が行われています。この方法は横に位置しますので、人工呼吸後、胸骨圧迫に移りやすいですので、一人で行う時はこちらの方が無駄な中断時間は少ないと思います。
他の持ち方もありますが、ここでは割愛します。どの方法にしても持ち方等をしっかり理解し、いつでも行えるように練習しておくことは大切です。
9)胸骨圧迫を行います。
1分間に100回のリズムで、30回押します。圧迫する位置は、1歳未満と1歳から8歳まででは若干異なっています。一度勉強してください。他のページに記載していますので、他も見てください。

圧迫位置は両方の乳頭戦を推測で結んだ線上で、胸の真ん中です。成人と同じ圧迫位置です。

胸の真ん中を胸の厚みの1/3程度沈む力で1分間に100回のリズムで30回押します(人工呼吸を省略した場合は、胸骨圧迫を継続です)。写真では片手で押していますが、体格等で片手では十分な強さで押せない場合は、成人と同じ両手でいます。
心肺蘇生法は人工呼吸2回と胸骨圧迫30回になりました。当然ですが、人工呼吸を行わない場合は、胸骨圧迫のみを継続します。これを救急隊が来るまで、綾子ちゃんが動き出すまで継続します。
サイレンが聞こえても、心肺蘇生法は中断しない。

皆さんが綾香ちゃん!助かって!との思いのこもったバトンは必ず救急隊に手渡ししましょう。救急隊の目の中に綾子ちゃんを助けるために、一生懸命がんばって心肺蘇生を行っているみなさんの姿が最初に飛び込んできたら、救急隊は涙が出るほどうれしいと思いますし、我々はもっとがんばって病院に1秒でも早く搬送しようとの気持ちも更に強くなると思います。人を助けるための救命リレーでは、多くの人の熱い思いが次走者を更に勇気づけます。
バトンを手渡しするように、救急隊が側に来て代わりますというまで、綾香ちゃんの心肺蘇生法は継続してください。もちろん、綾香ちゃんが途中で手足を動かしたり、泣き出したら、心肺蘇生法はやめてください。その後は救急隊に引き継ぐまで、呼吸状態等の観察を継続して下さい。
AEDが設置されている場合(詳しい説明は他ページにあります。)
小児でもAEDが使用できるように2006年からなりました。但し、1歳未満の乳児にはAED使用の適応はありません。成人と比べ、体格は小さいですので、AEDの電極パッドを小児用を使用することが望ましいです。小児用の電極パッドは大きさが小さいだけでなく、電気エネルギ量も成人の1/3になっています。ちなみに8歳以上では、成人用電極パッドを貼ってください。
小児用電極パッド;1歳以上8歳未満
成人用電極パッド;8歳以上
もし綾子ちゃんの通っている保育園に成人用の電極パッドのみがあったら、どうしますか?緊急事態ですので、その場合は成人用の電極パッドを貼り、AEDの指示に従います。成人用電極パッドを小児に貼る場合、二つの電極パッドが重ならないように注意して貼ってください。
10)AED持ってきました。先生、電源を入れて、電極パッドを貼ってください。貼り終えるまで、胸骨圧迫は続けます。
11)電極パッドを貼ったら、離れてください。AEDが自動解析を行います。
1歳以上の小児でのAEDも行えるようになりました。電極パッドは小児用の物が望ましいですが、側になく、緊急を要する場合は成人用のものを用いて行っても構いません。
12)AEDが必要と判断したら、」AEDは充電を開始し、通電ボタンを押せと音声指示をします。
13)自分、あなた、他の人、みんなが綾子ちゃんから離れているのを確認して、ボタンを押します。
14)ボタンを押したら、直ぐに胸骨圧迫法(心肺蘇生法)を始めます。
15)2分間心肺蘇生法を行ったら、AEDは再度解析を行い、必要なら通電ボタンを押せと指示が出ます。
注意事項;
AEDの中には、古いプログラムの入ったAEDと新しいプログラムの入ったAEDがあります。上記で示したのは新しいプログラムの場合です。どちらか解らない場合もありますが、以下の点だけは忘れないで下さい。
1)電源を入れる
2)電極パッドを心臓をはさむように貼る
3)通電ボタンを押す。
AEDの中には懇切丁寧に服を脱がせる、連絡をすると言った内容の指示がでるものがあります。この指示に従っていると、時間の無駄になりますので、電源を入れたら、電極を貼るこの二つは速やかに行います。その後はAEDの音声指示通り行えば、安全に出来ます。
AEDの操作は簡単ですので、誰でも行えると思います。ただ、操作法を知っている人の方が知らない人よりも早く実施できるとの報告がありますので、是非保育園の先生には今一度新しい心肺蘇生法がわが国でも始まった今、心肺蘇生法とAEDの講習を受けていただきたいと思います。新しい心肺蘇生法は消防で教えてもらえるとおもいますので、是非お近くの消防に電話をしてみてください。
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